男性同士の恋愛を描いた、女性向けマンガ・小説作品の「BL(ボーイズラブ)」。ここ最近、よく見掛けるようになったけれど、自分とは縁のないジャンルだと思っている人も多いのでは?

「BLはファンタジー」と腐女子(BL愛好者の総称)は言うけれど、実は意外なところで現実の影響を受けているのです。今回は、腐女子じゃなくてもBLをもっと身近に感じられる(!?)、日本経済とBLの意外な関係を、過去の人気作品を振り返りながらご紹介します!

“攻め”はお金持ちがアタリマエ?

『絶愛-1989-1』
尾崎 南 (著)
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BL黎明期の1980~90年代、日本はバブル真っただ中。当時、少女マンガ雑誌『マーガレット』(集英社)で連載されていた『絶愛-1989-』(尾崎南)は、人気歌手・南條晃司とサッカー少年・泉拓人の命懸けの恋愛ストーリーを描き、OVAやイメージCDも発売された大ヒット作です。

この作品で特に注目したいのが、攻め(男性同士の恋愛関係での男役。その反対の女役を受けと呼ぶ)である晃司のスペック。超人気歌手でありながら、実家は世界に名だたる企業・條統カンパニーを経営し、江戸時代から長く継承されている居合・真陰流の宗家。しかも、母親は世界的に活躍する女優で、経済力・容姿ともに抜群な男なのです。さらに、晃司は高校生のクセに大物女優と関係を持ち、高級車を乗りまわすなど、その言動は派手のひとことに尽きます。さすが、バブル期の攻め。

このほかにも、MI6の少佐であるバンコラン(『パタリロ!』魔夜峰央/白泉社)や、美貌と最高の頭脳を持つ人工体の超エリート人間・イアソン(『間の楔』吉原理恵子/徳間書店)など、当時の攻めはカッコよくてスゴい男ばかり。ごく普通のスペックでは、攻めにはなれない時代でした。