ボカロから派生した亜種キャラクターたち

初音ミクから火の点いたボーカロイド人気を受け、ニコ動で誕生したムーブメントが「UTAU」によるキャラクター創造だ。UTAU(ウタウ)とは「人力ボーカロイド支援ツール」として公開されたソフト。要するに“元になる音声ファイルさえあれば、誰でも手軽にボーカロイド的なものを作成できるソフト”である。

人力ボーカロイド支援ツールらしきものを作ってみた その1 導入編 投稿者:飴屋P


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こうして誕生したUTAUキャラクターで最も有名なのが「重音テト」。名前やビジュアルが初音ミクを意識したものになっているのは、そもそも2chのエイプリルフールネタから“架空ボーカロイド”として生まれたため。当初はジョークで済んでいたのだが、悪ノリ好きな2ch住人によってツインドリルヘアーの美少女ビジュアルが描かれ、UTAUを使って音声が加わり、さらに「年齢は31歳」「純粋な人間ではなくキメラ」「服装は軍服」「第二形態に変身する」など次々とプロフィールが完成。『嘘の歌姫』や『おちゃめ機能』といった人気曲が投稿され、もはや完全に一個のキャラクターとして定着した。

 

【第10回MMD杯本選】ミクさんたちでサイバーサンダーサイダー 投稿者:kazuma


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この重音テトに、同じくUTAUのキャラクター唄音ウタ(デフォ子)、桃音モモが加わった3人組ユニットは「UTAU三人娘」として認知され、ボカロ本家である初音ミクたちとたびたび動画で共演している。

他にも、ファンの間で定着しているボーカロイド派生キャラとして「亞北ネル」「弱音ハク」がいる。

亞北ネルは外見が初音ミクとかなりコンパチ(類似)な美少女。発祥は2ch内で初音ミクを貶めようとした人物たちを強引に“萌え擬人化”したキャラ。見た目がミクさんに似ていたり、二次創作動画でやけにミクさんへ突っかかるのはそんな経緯があるからだろうか。本家ボカロキャラの鏡音リン君と仲良しな動画も多く、そのリア充ぶりを見せつけている。

一方の弱音ハクは白髪、巨乳のお姉さん風キャラ。やはり発祥は2chで、後にCaffEin(カフェイン)氏がイラストを描いたことにより人物イメージが固まった。キャラ名や「キャラクター・ボヤキ・シリーズ VOYAKILOID 弱音ハク」という正式名称が示すとおり、ボーカロイドではなく“ボヤキロイド”。自分の音楽的才能のなさに打ちひしがれ、酒に逃避するネガティブ系キャラという公式設定になっている。本家ボカロにはMEIKO、巡音ルカといった正統派お姉さんがいるが、設定を差別化することで独自の存在感を醸し出している。

彼女らはあくまで「派生キャラ、亜種キャラ」扱いだが、すでに商用ゲームで初音ミクたちとともに出演したり、グッズが販売されていたり、キャラクターとしての人気は高い。

伊達杏子やテライユキといった、有名事務所またはプロクリエイターの送り出したCGアイドルは、残念ながらこれまで大きな成功を得られなかった。時代が追いついていなかったから仕方ない?……それだけが理由だろうか。現に、鳴り物入りでフジテレビからデビューしたCGアナウンサー「杏梨ルネ」は、一年も経たないうちに“退社”を発表したばかり。反面で、楽曲作成ツールとして誕生した初音ミクたちが思いがけない人気を得て、真の意味でのバーチャルアイドルとなりつつあるのは皮肉な話だ。

大手メディアや広告代理店のゴリ押しを受けるわけでもなく、ネットユーザーの自発的な活動で盛り上がってきたボーカロイド人気は、今のところまだ陰りが見えない。それどころか先日、多機能な音声合成ソフト「CeVIO Creative Studio FREE」が無償公開されてネットで新たな話題となっている。これでまた“コンピュータに歌わせたり喋らせたりしたい”という欲求が簡単に叶えやすくなっただろう。

無料なのに多機能!音声合成ソフト「CeVIO Creative Studio FREE」ご紹介
投稿者:CeVIOProject

クリエイターと消費者の垣根がどんどん取り払われていっている昨今、進化するツールを駆使して創作に取り組むユーザーたちの活動から目が離せない。

あなたもボカロの世界にハマってみませんか?

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。