ジャジーでアバンギャルドなミュージシャンの顔ぶれに驚愕! 『ReLIFE』
この夏、放送をスタートしたアニメの中でも、劇伴を担当するミュージシャンの人選に強烈な個性を感じられる作品が、『ReLIFE』です。
本作のサウンドトラックには、ジャジーなナンバーが揃っており、今期のアニメ作品において特別な輝きを放っています。アニメ本編を一目観た……いや、そのBGMを一聴した瞬間に、それがジャズ・ミュージシャンがクリエイトしていることが即座に分かる程、劇伴の個性が際立っているのです。
ある時は鍵盤の奏でる叙情性に溢れたメロディで、ある時はフリーキーなサウンドで"聴かせる"楽曲が揃った『ReLIFE』のサウンドトラックを手掛けているのは、ジャズピアニストの坪口昌恭さん。
また、ドラムには、即興音楽的な要素が強いアバンギャルドな音楽ユニット「アルタード・ステイツ」や、異形のビッグバンド「渋さ知らズ」、ツインドラムを用いたトランシーなサウンドを特徴とする「ROVO」といった先進的なバンドで活躍する垣安洋さんがクレジットされています。
坪口さんや垣安が作るアニメのサントラということで、良い意味での特異性が目を引く『ReLIFE』ですが、更に、驚きなのが菊地成孔さんがサックスで参加している点です。
菊地さんといえば、「dCprG(DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN、DCPRG)」や「東京ザヴィヌルバッハ」など多数のバンド、ユニットを率いるジャズミュージシャンであり、批評家や文筆家としてもご活躍されているマルチな才能を持つアーティスト。
近年では、『LUPIN the Third -峰不二子という女-』や『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の音楽を担当するなど、アニメ作品のサントラにも参加している菊地さんですが、『ReLIFE』のようなコメディ色の強い学園アニメで、そのサックスの音色を聴けるというのは、予想外な驚きがあり、この辺りも『ReLIFE』の劇伴における聴きどころの一つとなっています。
夏アニメの中でも特に注目すべき特異点として、本作の劇伴はストーリーやキャラクターと共に楽しんでいただきたいところです。
『ReLIFE』のように前衛的な音楽性を持つミュージシャンが参加したアニメ作品というと、吉田達也氏(ルインズ、是巨人、Vampillia等)の爆裂ドラミングが炸裂する『ベン・トー』などが思い出されますが、それにしても、こうした作品に出会うと「"アニメサントラ"って本当に様々な才能が集まる場でもあるのだな」と強く思わされますよね。
夢の音楽ユニットが作り出す、優しくてポップな音世界! 『ももくり』
『ももくり』も、またその音楽面に注目しておきたい2016年夏アニメの一つ!
本作は、可愛らしいルックスの主人公、桃月心也(ももつきしんや)と、そんな彼に一途かつちょっと危ない恋心を抱くヒロイン、栗原雪(くりはらゆき)がカップルとして結ばれたことから始まるストーリーを描いた学園ラブコメです。
ドラマを盛り上げてくれる劇伴は、「クラムボン」やアニソンDJユニット、「2ANIMEny DJs」の活動でアニメファンにもお馴染みのミトさん、「TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」のメンバーであり、様々なアニメ作品で主題歌やキャラソンを作り出している松井洋平さん、そして、シンガーソングライターの伊藤真澄さんによって結成された音楽ユニット「TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST」が手掛けており、非常に洗練されたサウンドを聴かせてくれます。
ロック、ポップス、アニメ音楽の世界で、それぞれ素晴らしい音楽をクリエイトしてきたミュージシャンと作曲家が集まったスペシャルな音楽ユニットということで、そのメロディの素晴らしさは言わずもがな。この『ももくり』も、非常に豪華な劇伴が魅力の作品です。
初々しい高校生カップルの恋の行く末を優しく見守るように、穏やかにバックで流れるBGMは、作品のストーリーやキャラクターにピッタリと寄り添っており、アニメ本編が持つパワーを更に印象深いものにしています。まさに、劇伴らしい劇伴であり、アニメのサウンドトラックとして、とても理想的なものになっています。
また、イメージBG(背景)をフル活用したカラフルな演出や、本作で監督を務める平池芳正さんの作風にも、ポップなメロディが力強くマッチしており、「『ももくり』という作品には、この人達のサウンドトラック以外にはありえないな」と思ってしまう程、音楽とアニメーションのバランスが良いのです。
おもしろいのが、夏アニメ作品の中でも、特にクリエイターの起用法が目を引いた『ReLIFE』と『ももくり』が、どちらもWEBコミックサイトの『comico』原作(2作品とも、連載作をWEBアニメ化した作品であり、この夏から始まったテレビアニメ版は、内容を再編集したもの)という点です。音楽に非常にこだわりと聴きどころを感じるアニメ作品がWEB発進で出てきたという事実は、非常に興味深いところですよね。
『comico』原作のアニメというと、秋には、『ナンバカ』も控えており、こちらの作品のサントラにも大いに期待したいところです。