市場の動向を左右するアマゾンと出版社の関係性

コンテンツに関する権利を持つ出版社と、アマゾンを筆頭とした電子書籍販売会社との間では、これまで価格決定権や売り上げの分配をめぐって長年交渉が続いてきた。

「アメリカの『Googleブックス』は『まずは電子化して配信するので、問題があったら教えてください』といった少々強引な方法を採用し、反発もうけました。一方、日本の出版社はやり方が丁寧。電子化の許諾を一件ずつ取って、真面目に著作権処理を進めているので時間がかかります。またアマゾンの場合、流通の中に占めるシェアが非常に大きかったこともあり、電子化は一気に進みました。そのため、出版社の中には厳しい条件で契約を結んだとの声もあり、必ずしも両者が満足しているとは言えない状況です」

それでは、アマゾンと日本の各出版社との交渉の行方はどうなるのか。アメリカでは、以前は価格決定権がアマゾン側にあるホールセール(卸売)契約が交わされていたが、現在では価格決定権が出版社側に移り、売り上げの30%程度が販売手数料としてアマゾンに入る仕組みとなっている。

「アマゾン等の電子書店と出版社の関係性がどのように構築されていくのかが、2012年の最大のトピックとなるはずです。出版社側では、電子出版市場の拡大を目的とした『出版デジタル機構(仮称)』を設立し、電子出版の共有インフラを作る動きがあります。書店側も出版社側も電子ビジネスは進めたいと思っている中で、どこで折り合えるのか。様々な争点がどのように落ち着くのかに注目です」

先行する映画や音楽の世界では、ダウンロード配信の販売数は普及期入りと共に急激に伸びた。今後、ベストセラー小説などが次々と電子書籍化した場合、市場にドラスティックな変化が起きるのは間違いないだろう。