最近では遠出するとなると、親はありとあらゆるものを全部そろえてしまいがちです。でも、ある程度不自由さがあっていいし、あった方がいいのです。花まる学習会のサマースクールは、「バカンスではなくスクールです」と伝えていて、参加者にはあえて不自由な環境を作る、不自由な環境に行く機会としても打ち出しています。キャンプなどではマッチやライターはあえて持っていかない。私はメタルマッチという火打石みたいなもので、火花を飛ばして火をつけています。
今はキッチンでもIHならボタンを押せば調理ができてしまうから、火を間近で見る機会が少ない。実際にやってみると、火をつけるのにみんな夢中になりますよ。3時間以上、火をつけるために粘った男の子たちもいました。見事、火がついた瞬間の盛り上がりといったら。その場にいる全員がもう大興奮ですよ。そして、その時間こそ子どもたちの頭はフル回転しているのです。
――なるほど。それもできるだけ子どもにやらせるわけですね。
箕浦:そうです。親子キャンプで様子を見ていると、全部親が子どもにやり方を教えてしまう傾向が強いように感じています。
しかし、そういう教育をしていると、子どもが“指示待ち人間”になってしまうのです。
「ほら自由に遊んでいいよ」と言っても、「何をして遊んでいいのかわからない」、「何をして遊べばいいんですか?」と言う子が増えてきています。最近は遊びすら指示されている子が多い現状には、危機感を覚えます。
――“指示待ち”になってしまっている子どもに対しては、どういう声かけが有効でしょうか。
箕浦:それについては、花まる学習会が開催している野外体験のときにやっていることがあります。
冬の雪国スクールに年長の子どもを100人ぐらい連れていった時、まだ誰の足跡もついていない大雪原を前にして90人はワーっと遊びに行ったんですが、残り10人は何をして遊んだらいいのか、わからず立ち尽くしていたんです。
そこで、各班にいるスタッフ(リーダー)を集めて「思いつく遊びを全力でやってくれ」と話して、10人ぐらいのリーダーが雪山を作ったり、雪合戦を始めたりしました。すると、子どもたちも一緒にやり始めたのです、しかも楽しそうに。
こんなふうに、大人が本気で遊ぶ、その姿を見せるというのも大事なポイントだと考えています。自分から遊べる子の家庭では、その子の親が本気で一緒に遊んでいる、または遊んでいる姿を見せているのだろうと思います。
遊びもいいけど、夏休みこそ「規則正しく」
――生活面ではいかがでしょうか。効果的な夏休みの過ごし方ってありますか。
箕浦:夏休みには、いろいろな経験ができるチャンスがある一方、基本的な生活習慣、リズムが崩れてしまうという危険もあります。長い休みだからこそ、朝起きる時間や勉強をするタイミングなどを決めてしまうと良いでしょう。
また、「勉強させた方がいいか」とよく聞かれます。させた方がいいに決まっていますが、大切なのは量ではなくリズムです。毎日、決まった時間にやることが大切です。起床、食事、就寝、そして勉強の時間は絶対決めた方がいい。そこで生活リズムが作られます。