Joe(Gt)(撮影・NORI)

彼曰く「とにかく気持ちの悪い、謎のフリをやっている集団」が理想だと。一糸乱れぬフリをした、宗教みたいなヴィジュアル系。つまりボーカルは神様で、“気持ち悪い”は褒め言葉なのだ。

「俺は今、神様だぜ。ボーカルのいうことを聴いていたら、必ず楽しくなれる。俺を信じてくれるかい?」

宗教的というか、まんま“なにか”のパロディが飛び出す『神様は盲点色』では、クラオカとJoeはパワーあふれるギターソロを奏で、ぶうは「大宇宙水素水『波導』」(※物販で売っている5,000円の水)を手にし高説をたれ、フロアではわっさわっさとヘドバンが広がる。

続いての『飛び出すメガネ』でフロアを揺らしたあとは、敬愛してやまない、筋肉少女帯『僕の宗教へようこそ~Welcome to my religion~』のカバーを披露。「さあ、誰に踊らされたい? 世の中に踊らされるよりも、ボクらに踊らされた方が楽しいんじゃないか?」と高らかに叫ぶぶう。

ミド(Ba)(撮影・NORI)

えんそくの踊りといえば『狂い時計のネジ巻きマキナ』。メンバー全員が楽器を置いて踊る曲なのだが、今回はSINもドラムセットを離れ、ダンスに参加したものだから、フロアからは黄色い歓喜の悲鳴があがり、メンバーもガッツポーズし、おもむろに乾杯を始めるクラオカとミド。

「それ、今日発売の限定マグカップじゃない? ほしい!」(ぶう)「すげえ量も入るからお得だぞ!」(クラオカ)「違う絵が書いてある! 版代をケチらなかったのか!」(ミド)

SIN(Dr)(撮影・NORI)

限定マグカップ、“えんそくに行ったつもり”貯金箱など、異様に一体感のある物販紹介が続くかと思いきや、やぶからぼうにJoeが「本当はもっとなりたい自分があった」と告白。「シノラーになりたかった」というJoeに続いて「キムタク」(クラオカ)、「hydeさん(※絶対に“さん”をつける)」(SIN)、「魚肉ソーセージ」(ミド)で、茶番寸劇を繰り広げる。……このくだりは筆舌に尽くしがたく、14周年、そして活動休止ライブとは思えない、「楽屋以下の悪ふざけ(©ぶう)」の時間を経て、『金曜日のチェーンソー』で再び戦闘態勢へ。

『アリス・エクス・ マキナ』から、空間系のギターの音が心地よく響き渡る『怪人ラボの夜』は、ミラーボールの柔らかな光も相まって、暖かくも切ない。そして、光さすような『Society finch for teen』で、エモみはピークに。“エモい”なんて、気軽に使うべき言葉じゃないかもしれないが、えんそくは“エモい”んだから仕方ない。

茶番に興じるクラオカ・ミド・SIN (撮影・NORI)

「14年バンドをやってきて、20代のすべてを捧げてきて、ここまでやってこれたのは、主にミドが「日和るね〜」と言ってくれたのと、みなさんが、オラオラな僕らを愛してくれるからだと思います」

そして、えんそくは歌詞がいいバンドなのではないか?と言い出すぶう(今更?)。暴れなくても楽しいバンドなのでは?と、この日はぶうが夜なべして作成した歌詞映像がスクリーンに投影されていたこともあり、歌詞の良さ、曲の良さを改めて感じたという。