たくさんの動物たちの、妊娠・出産にまつわる意外なエピソードが勉強にもなる
――漫画では描いていないけど実はこんな裏設定が…というものがあれば、教えてください。
「電子書籍版のほうには10枚ほどおまけイラストがついているんですが、その中に裏設定を入れています。
社長がどういう経緯でアニマル社を設立したのか、皇帝さんがどういう経緯で前の会社をやめてアニマル社に入ったのか、世間から見た知性動物と社会に適応するための知性動物たちの工夫、奥さんが妊娠中の田中の漫画に描かれなかった変化、それから田中の同僚の高橋さんの事情…などですね。
たとえばアニマル社に限らず、知性動物たちは大体小物か衣服を身に着けていることが多くて、全裸の動物はほぼいないです。これは人間からパッと見たときに普通の動物じゃなくて知性動物なんだと認識してもらうためです。
トラが電車に入ってきたとき、知性動物だったら一応安心するけどそうでなかったら怖いでしょう(笑)。だからライオン社長や、オオカミの大上さんなんかの明らかな肉食動物は、特にしっかり服を着ている場合が多いです。
知性動物は人間たちのためにそういうものを身に着けているわけなので、人間が田中以外いないアニマル社内では、そういうネクタイやスーツなんかを取って働いていることもあります」
――たくさんの動物たちの、妊娠・出産にまつわる意外なエピソードが出てきて、勉強にもなる漫画ですよね。内野さんが調べていて特に興味深かったのは、どの動物のエピソードですか?
「一番『えーっ!』と思ったのはブチハイエナですね! すごく痛い思いをするでしょうし、ブチハイエナのメスには生まれたくないです(笑)。でも群れの仲はすごく良くて、みんなで仲良く助け合って生きているので、そこは羨ましいかな…。
あと最後のほうのヒトとチンパンジー、ボノボ(ヒト科チンパンジー属の類人猿)の違いの部分はとても気に入っています。表現や、どうまとめるかという部分に一番頭を悩ませた箇所でもあります。
ボノボのことは大体知っていましたけど、なんとなくよく知っていると思っていたチンパンジーのことを全然知らなかったなと感じたところでもあります。
そしてヒトの進化のあたり、ここは読者の方がどう感じたか聞いてみたいですね。私自身すごく熱が入った部分だったので(笑)」
――もし続編があるとしたら、次はどんな動物について描きたいですか?
「今作では、虫や魚やカエルの話からヒト科までと多岐に渡りましたが、調べたり描いたりが楽しいのはやっぱり哺乳類や鳥などなので、そのあたりを今後見ていきたいですね。特にサルや類人猿はヒトに近いのもあって面白いです!」
内野さんの考える理想の夫婦像
――田中夫妻も、最後にはパートナーと呼ぶにふさわしい、いい夫婦になっていきましたよね。内野さんの考える理想の夫婦像はありますか?
「育児コミックエッセイのあとがきにも書いたことがありますが、夫婦って家庭という船を動かす船員なんだと思っています。
どっちかだけに負担がかかっていたり、お互いを信用できなかったりすれば、うまく進まなかったり、方向を定められなかったり、転覆したりする。それぞれの船員にどういう役割がどう割り振られているかは、それぞれの船で違いますが、協力しなければ進んでいけないのはどの船も同じ。
その協力しようとする気持ちがちゃんと互いにある状態が、理想かなと思います」
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さまざまな動物たちの興味深い妊娠・出産事情を知ることで、人間の妊娠・出産についてもより深く知ることができる『こちらアニマル社商品企画部育児課』。出産を控えたプレママはもちろん、そんなプレママの夫にも、ぜひ読んでほしい一冊です。
画像提供・イースト・プレス