8月17日に刊行された、『こうしておれは父になる(のか)』は、30代会社員兼業ライターの「本人」さん(※「本人」が筆名です)の身に突如訪れた、「大切なお知らせ」という名の妻の妊娠、そして始まる怒涛の育児生活にまつわる実感を綴るエッセイ本です。
臨場感あふれるライブレポートが人気でTwitterフォロワー1万人を超える本人さんらしく、そのスピード感あふれる文体は、まさに「育児ライブレポート本」ともいえるでしょう。
「イクメン」というには気恥ずかしい、とはいえ自分なりに育児をやっていくという、等身大の父親1年生ぶりに共感を覚える人も少なくないのでは。
今回は本書の刊行を記念して、同じく30代会社員兼業ライター、そして3児の父親であるレジーさんとの対談を行いました。
全教科100点は無理!
本人「レジーさんのところは、今お子さんは何人ですか?」
レジー「3人ですね。上が4歳で下が双子の1歳。全員女の子です。」
本人「うわあ~(感嘆)。」
ーー今回、対談をセッティングしたのは、お二人は会社員兼業のライター、そしてフェスやライブに足を運ぶ、熱心な音楽リスナーでもあり、共通点も多いと思ったからです。
本人「今日は本当に色々お話を伺いたくて……。子育てって、とにかく自分のキャパを試されている気がするんですよね。
僕らって日中の仕事に加えて副業というかライターの仕事もある。その上で、妊娠中や出産直後ってパートナーの健康状態は良くないし、そこに新しい命がいて……。これに全教科100点とれって!マジでやべぇってなりました。」
レジー「『こうしておれは父になる(のか)』の本文にも書いてありましたけど、仕事の現場がきつい上に、家に帰って子どものケアもしなくては!となる、その板挟みの感覚はすごくわかります。」
本人「それなのに、妻からは『家事やった気になってるだけ』と言われたりして、よくSNSでディスられる『わかってないパパ』って俺のことじゃん!って自己嫌悪になったり……。」
レジー「『こうしておれは父になる(のか)』は、描写の細かさで思い出すことが多くて、それが積み重なって面白い本になっている。
さっきの仕事との板挟みっていうのはほんの一例で、子育てには大変なこともたくさんありますけど、大変なことだけではなく、ある種『面白がれる』ポイントもあると思うんですよね。
「そんな対立を見せる両陣営のはざまで、子供は慣れない寝返りを打っちゃ手足を浮かせて横ばいで『うー!』と叫んだりしている(これマジで何)」(本書P186)ってくだりがあるじゃないですか。
僕も以前、三女だけ寝てくれなくて仕方なく自分の布団に連れてきたときに、あのポーズを繰り返しながらひたすら愛想を振りまいてきて何なんだよ!って思ったりしたんですけど(笑)、そんな風に『ちょっとしたこと』を慈しめる視点って子育てにとって大事というか、そこを面白がることは、決して不謹慎じゃないと思うんです。」
本人「そんなときでも、レジーさんは自己発信でブログ記事をコンスタントにアップしたり、本を書いていたじゃないですか。どんなメンタルでやってきたんだろう?と。」
レジー「それをすること自体がストレス発散になっていたんだと思うんですけど、さすがに執筆の仕事は減らしました。よく『効率的に時間を使いましょう』とかいいますけど、「効率」でなんとかするのには限界がありますよ。」
本人「それは自分も今回本を書いていて思いました。」
レジー「今年の4月から妻が職場に改めて復帰して、双子も保育園に行き始めたので、この4月~6月で生活スタイルが急に変わって大変でしたね。
これまでは、僕が上の子だけを保育園に連れて行って、妻は休みで双子を見ていたのが、保育園に3人連れて行くことになって、妻も仕事が始まり、その上会社の仕事もこれまでで一番ってくらいに忙しくて……。
さっき『全教科100点』っておっしゃってますけど、とれなくていいというか、とれるわけがないですよ!(笑)」
本人「ああ~!本当に、こういうときに共有することができない孤独感があったんです。今日の場は本当に嬉しい(笑)。」
なぜネット上には男親のコミュニティが少ないのか
ーーそういえば、育児の悩みや情報を共有する、父親のコミュニティはあるのでしょうか。あまり見かけないような。
レジー「父親のコミュニティが少ないのは、『関わり方』の差がありすぎるからだと思うんです。母親のコミュニティだったら、すべての人に『出産』という共通体験があるからこそ繋がりやすいところもあるんじゃないかなと。
父親の場合、あまり関わってない人から専業主夫の人まで様々で、同レベルで育児に関わっている人を見つけるのは、なかなか難しいのかもしれないです。」
ーーたとえば、男性の方が育休は取りづらいと言われていたり、制度面でも男性の方が差はありそうですね。
レジー「本にも書いてありましたが、本人さんは育休をとられていたじゃないですか。僕も職場では育児にコミットするというのを周りに認めてもらいながら仕事をしているんですけど、今思えば『言ったもん勝ち』だったなと。
上司も保育園に迎えに行くような人だったので、そのあたり理解があってラッキーでもあったんですけど。」
本人「うちの会社も、そのあたりに関してはかなり恵まれていて、社長に子どもが複数いることもあってか『男性も育休を積極的に取っていこう』という雰囲気が定着していたんです。
『育児休業』だから、本来は会社からお金はもらえないんですけど補助があって。自治体からの給付金とは別に。これは育休を取らない手はないだろうと。」
レジー「それは素晴らしい!」