他人がいないと生まれない緊張感なんて偽物でしょう(千秋)
千秋:なんかね~、この対談も周りが提案したことだし、この「This Is The "FACT"」にも「バンド同士が戦う」みたいなイメージが先行してるんですけど、もう全然戦うつもりもないですもん。
――とはいえ「仲良しこよし」でやるつもりもないのでしょうか。
千秋:よく対バンイベントとかでも皆カッコつけて「仲良しこよしでやるつもりはない」みたいに言うじゃないですか。でも「仲良し」に越したことはなくないですか?
暁:ほぉ~~~~? 変わったねぇ。
千秋:だって、仲良しのほうが絶対いいじゃん。
暁:個人的には今の言葉は嬉しかったです。
千秋:だってどのバンドだって「俺たち仲良しこよしでやってます」なんて絶対に言わへんやん。「ぬるま湯じゃない、俺らは戦う」とか言うやん。でも無理に戦う場所を探さなくてもええと思いますよね。
――そういう発言をする人は、緊張感を求めているのでは。
千秋:緊張感? 他人がいないと生まれない緊張感なんて偽物でしょう。ワンマンでもイベントでも緊張感持ってできないと。
俺らもアルルカンも長くなってきたし、そういう時期は終わったのかなと。だから主催に関しても「戦う」っていうのは、疑問符がつくんです。
――「周りを倒す」という感じでもない。
千秋:倒す必要あります? 立っててほしいですもん。このイベントに出る若手3バンドは一番難しい時期なんですよ。皆Zeppくらいのキャパをやったけど、ソールドはしてないし、悩める3バンドですよ。
というか、どうでもいいっちゃあどうでもいい。無関心になりましたね。
――よそはよそ、うちはうちみたいな。
千秋:まさにそうですよ。
暁:(今の千秋は)ニュートラルになったってことなんじゃないですか。
――たとえば、今年のDEZERTはVISUAL JAPAN SUMMIT 2016などの規模の大きなイベントに出ることもありましたが。
千秋:VJSも、あと4月のCureFesも楽しいとは思わなかったんですよ。ステージ多いし、中堅、上、下、多すぎて、どれが「真実(FACT)」かがわからないんですよ。数が多いから結果的に立つべきではないレベルのバンドまで出てるし。
若手はVJSに出てラッキーって思ってる場合じゃないですよ。俺らがしっかりしてないから、上の世代が降りてきてくれたわけじゃないですか。
――大規模フェスは幕の内弁当っぽさがありますよね。
千秋:俺ね、幕の内弁当嫌いなんですよ。
――なるほど、ちなみに「This Is The "FACT"」は何弁当ですか?
千秋:カツと、ご飯と、漬物さえあればいいんです。
暁:えっバンドの数とメニュー足りてなくない? 誰か衣になってたやん完全に。
千秋:つまりキュッと絞りたい、集中したいんです。なんとなく来てみて欲しいみたいなイベントにはしたくなかった。だからこのタイトルにしたんですけど。
6バンドでも演奏時間は長いし、この「ヴィジュアル系」のイベントの方が楽しい。
――イベントのコンセプトがはっきりしているほうがいいと。
千秋:意志のあるロックバンドが集まって、演奏時間も長いほうが絶対いいと思うんですよね。DEZERT、アルルカン、NOCTURNAL BLOODLUSTという武道館を目指す3バンドと、MUCC、A9、LM.Cという武道館経験のある3バンド。
順番もアルルカン→ノクブラって続くことは絶対にしないから。ちゃんと交互にするつもり、発展途上のバンドと、ある意味完成されたバンドの違い、それがどう伝わるか、どうお客さんに映るのか。そういう風にしたい。
暁:それは絶対楽しい。
千秋:見たくなかったら(会場の新木場スタジオコーストには)バーカウンターあるからそこで休んどけばいい。「全部のバンドを見て」とは思わない。興味あるところだけ見たかったら見ればいいし、好きにして。
だって「全部見てね」って、そんなん無茶ですよ。「来てね」で来てくれて、「見てね」で見てくれたら世の中のバンドは全員売れてますからね?
暁:カカカ。
千秋 「この日ライブあるから来てね~」で人が集まれば苦労してないですよ。一人に来てもらうためにこうやってインタビューしたり色々やるわけでしょう。見合ってないですよ。
――かけたコストに見合ってないと感じます?
千秋:見合ってないです。それは「ダブルラリアット」でも思った。ツアーの前に暁とふたりで「Cure」で対談したんです。これは編集部にも直接言ったから書いてもいいですけど、会場で対談読んだか聞いたんです。
暁:そしたらほとんど手が上がらんかったなあ。
千秋:届いてなかったんです。
――その記事、読みましたけど、写真も撮り下ろしで内容も良かったと思いますよ。
千秋:そのリソースを他に使ったらもっと届いたかもしれない。そう感じるくらい、雑誌では届かなかった。まあ文句は言うけど、「Cure」のスタンスは素晴らしいと思う。インディーズに絞ってコアな人向けにやっている。
この対談記事は俺の自己満じゃなくって「お客さんに来てほしい」からやってるわけだし。そもそもネットの記事なんて、俺らのことによっぽど興味のある人しか見ない。だからこの記事もこのイベントに来るって決めてる人しか読まない。そう思ったほうが良い。
――それは耳の痛い話です。こういうWEBの記事は無料で読めるぶん、開けているようで、実際の数字を見るとそうでもないんですよね。
千秋:人気バンドだったら読まれるし、そうじゃないと読まれないっていう単純な話でしょう。
――逆にファンの方は読んでくれる可能性は高いということでもあるのですが。それは記事を作る方の課題でもあるんですよ。
千秋:そう。今日ね、暁との対談でこの話になるんじゃないかと思ったんです。イベント関係なくなってきた。
暁:くくく(笑)。
千秋:今更お互いのバンドのこと話すのもね? 「1月はよろしくね」でいいじゃないですか。
暁:うん(笑)。
千秋:これを読んだ人が考えるのも面白いんじゃなかなと。「お前はどうする?」っていうか。
インディーズバンドのプロモーション手段ってこれしかないから、どのバンドもネットで発言してるけど、どこまで伝わって何人が来てくれるのか。