ここまで書くと、『なんだかどこかでありがちなキャラクターだなぁ』と思ってしまうかもしれません。現代では赤いクセっ毛にしても日焼けした肌も、それほど珍しいものではありません。家事が苦手な女の子だって、いろんな作品で山ほど登場しています。男装して見分けがつかない設定なんて、『桜蘭高校ホスト部』の川口春奈か、『花ざかりの君たちへ イケメン☆パラダイス』の前田敦子でしょうか。そう言えば、どちらも漫画原作だったなと。『孔明のヨメ。』の連載開始に当たって、その辺りの設定を上手く取り込んでいるのかもしれませんね。
ただ後に市場で出会った西域(西アジアからヨーロッパくらい)の商人に、「しっかし可愛いよなー、女の子だったらウチの村でモテモテよー」と言われて、孔明も『月英さんは西域美人なのか…』と思う場面があります。“女の子だったら”は、危険をさけるために男装させていたからなのですが、それでも可愛いと評されるのですから、やはり何がしかの魅力があるのでしょう。その市場で、孔明は偶然出会った関羽と意気投合、月英は迷子のところを張飛に救われます。また劉備玄徳の名前もポロッと登場します。『おお!』と思うのですが、彼らが本格的に関わってくるのは、後々のことになりそうです。
多少戻りますが、漫画は父親の黄承彦が、月英の結婚相手を探しに出るところから始まります。御飯のおかずとして釣りに出かけた孔明とバッタリ会って、孔明の人となりを気に入った黄承彦が、「ウチの娘は見た目はアレだが頭は良い!!ぜひ嫁に貰ってくれんか!?」と言ってしまいます。“アレ”と言うのは、前述の赤毛色黒なのでしょうけど、父親にしてはなんとも酷い売り文句だと思いませんか?けれども史実でも似たようなことを言っているようなんですね。ものによっては、月英の才知を耳にした孔明の方から結婚を申し込んだとされていることもあります。でもその折に黄承彦が「ウチの娘は見た目はアレだが……」と言うのは同じなんですね。嫁には行って欲しいと思っていても、容姿で破談となるのを避けたい親心の複雑さが言わせてしまったのかもしれません。
結婚してからはラブラブな新婚生活なのですが、寝台の中央に石を並べて、寝起きは一緒でも同衾せずなようです。実に初々しい夫婦なのですが、井戸の修理、月英の実家に設置した防衛装置の点検、諸葛家の家計の改善、と月英が大活躍。彼女に引っ張られるように、孔明も活動的になっていきます。
「まんがホーム」の連載では、後に劉備と孔明をつなげる徐庶が登場。孔明の過去が描かれているところです。「若い頃は、やんちゃだったぜ」ってわけでもないようですが、孔明は「昔はあんなにとんがってたのにねー」、「十五歳なのに妙にふてぶてしくって」などと言われています。そこから多少は丸くなったり、世の中に目を向ける過程が描かれたりするのかなと期待しています。ちょっと変わった三国志になりそうですが、三国志ファンにも、そうでない人にも、お勧めの一作です。
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