「辛い」「痛い」「突き刺さる」とまで言われる韓国の寒さ。あるいは「雪の降らない北海道」とも。
大陸性の乾いた寒風が吹く冬の韓国では、あつあつで、煮汁たっぷりの鍋が恋しくなる。そもそも韓国料理は大半が鍋ものと言ってもいいくらいの鍋天国。
今回はそのなかでも魚や貝を使った鍋を5品紹介する。汁がぐつぐつ言い始めたら、旅友たちの箸がいっせいにのびること間違いなし。
センテタン(生スケトウダラの鍋) ソウル
センテタンとは、冷凍していない生のスケトウダラ(センテ=生太)の身を、大根や春菊、豆もやしやセリなどの野菜といっしょに煮た鍋のこと。
シラコやタラコが入る場合もある。汁は唐辛子やニンニク、ショウガがきいていてけっこう辛く、身体があたたまる。ピリッとくるスープと淡白なスケトウダラの身は相性抜群。赤と白の悦楽だ。
センテタンと似た鍋ものにテグタンがある。こちらはマダラ(テグ=大口)の身や頭、アラなどを使うのが特徴。マダラは冷凍物の場合もある。
いずれも具を食べ終わったら、残ったスープに麺を入れたり、ごはんを投入してチャーハンにしたりして、旨味を味わい尽くす。
ソウルの鍾路5街(チョンノオーガ)駅10番出口から近い広蔵市場(クァンジャンシジャン)には、センテタンやテグタンの専門店が集まっている一角がある。そのひとつ「サムゲ・メウンタン」では通常2人前からの鍋ものが1人前から頼めるので、一人でも利用しやすい。
また、龍山(ヨンサン)エリアの三角地(サムガッチ)駅1番出口の東側には、専門店が集まるテグタン通りがある。
サムゲ・メウンタン
鍾路区鍾路4街165-3 TEL:02-2266-2361
09:00~24:00 月1で不定月曜休
ペガプタン(ハマグリ鍋) 扶安
ある食べもののために、ソウルから田舎町まで半日がかりでバスを乗り継いでいく。韓国南西部の黄海に面した辺山(ビョンサン)半島にある群山食堂のハマグリ鍋(ペガプタン)は、そんな酔狂な旅に値する鍋ものだ。
タコやイカやエビなどをこれでもかとばかりに盛った韓国によくある鍋とちがい、ペガプタンは大きなハマグリだけの直球勝負。スープは唐辛子で真っ赤に染めない澄まし汁。素材に自信がある証拠だ。
スッカラ(匙)で汁をすくって口に運びだしたらもう止まらない。ハッと我に帰り、キムチや塩辛をアクセントにして、また汁に。そして、貝から身を外し、ぷりぷりのところをペロッといただく。
何も足さない海そのものの味と香り。これ以来、海を見るたびにこの鍋を思い出してしまうほどだ。
群山食堂(クンサン・シクタン)
全羅北道扶安郡辺山面格浦里508-5 TEL:063-584-3234
8:00~20:00 無休
カルチチョリム(太刀魚の辛い鍋) ソウル
太刀魚(カルチ)の切り身を辛く煮つけたカルチチョリムは、ニンニクや唐辛子、ショウガがきいた刺激的な味だ。
ソウル南大門市場のC棟とD棟の西側ブロックには、カルチコルモクと呼ばれる太刀魚料理専門店が集まっている路地がある。そこでは小鍋立て式のカルチチョリムが食べられるが、何人かで鍋を囲むならソウル東部で日本人がよく利用するウォーカーヒルホテルやロッテワールドから地下鉄で10分程度の遁村市場(トゥンチョン・シジャン)にある済州料理専門店「済州アジュマネチッ」がおすすめだ。
済州出身の夫婦が営むこの店は、済州近海でとれる大ぶりの太刀魚がぜいたくに使われている。
太刀魚の胴体はその名の通り長くて平べったく、大きな骨が通っているため、けっして食べやすいとはいえないが、マッコリなどをゆっくり飲みながら、骨から身をこそいで食べるそのリズムがなんともいえない。この楽しみ方がわかったら韓国料理通も一流だ。
赤くて辛い汁には太刀魚の旨味がしっかり溶け出していて、それを匙ですくってごはんにかけて食べても美味しい。
済州アジュマネチッ
江東区城内洞428-9 TEL: 02-488-6268
12:00~02:00 不定休