アルコールに溺れる父に振り回され、苦悩する菊池真理子の実体験に基づく話題のコミック・エッセイ『酔うと化け物になる父がつらい』が待望の映画化!!
酔っ払った父親の信じられない“化け物”エピソードの数々に大笑いしちゃう本作だけど、これが自分の身に起こったことだと考えたらヤバいし、ツラい。
そこでウレぴあ総研では、原作者の菊池真理子さんとハピママ*の人気コミック・エッセイ「まっとうな親になりたい」で同じようにアルコール依存の両親との不仲を描いたChaccoさんの公開直前緊急対談を実施!
「これが作者の身に実際に起こったこと!?」
漫画や映画でも描かれる信じられないような化け物エピソードの数々から、過酷な環境の乗り越え方までドーンと語り合ってくれました。
主人公のマリの置かれた状況が自分とすごく似ていた
――Chaccoさんはもともと原作の大ファンだったそうですね。
Chacco はい。自分の漫画の下準備をしているときに買って読んだんですけど、いままで読んだ漫画の中でいちばん嗚咽しながら泣いた作品でした。
主人公のマリの置かれた状況が自分とすごく似ていて、シンクロ率が高かったので、他人事とは思えなかったんです。
菊池 私もChaccoさんが描かれたコミック・エッセイ「まっとうな親になりたい」をすべて拝読しましたけど、家族の在り様が確かにすごく似ていますね。
他の人の漫画を読むと、“あなたのせいじゃないのに!”とか“ここでなぜ自分を責める?”という思いが自然に湧き上がってきて、それが自分に反映される感じでした。
Chacco そうなんですよね。ただ、これは原作に出てくるエピソードですけど、菊池さんは自分が漫画で稼いだお金で実家をリフォームしたり、癌が見つかったお父さんの介護をしたり、なんだかんだ言いながら、最後までお父さんと密接に関わられていますよね。
私の両親はまだ健在で、ふたりでのんびり暮らしていますけど、私は菊池さんと違って、両親の生活や人生には介入しないと決めているんです。
私はあの状況で育ったから、あれが普通だと思っていた
菊池 それでいいと思いますよ。
Chacco えっ、そうなんですか? 私は逆に、菊池さんが家を出たいと思っていながら、どうして妹さんとふたりで実家で暮らし続けたのか、それがずっと気になっていたんですけど。
菊池 私はあの状況で育ったから、あれが普通だと思っていたし、実は違和感を抱いていなくて。
それが普通ではないということがいろいろ分かってきたのは、父が亡くなった後なんです。
Chacco なるほど、なるほど。
菊池 だから、ご両親が健在のうちに、それがおかしいということに気づける人はそこから作戦を立てられるので、いいなと思います。
「親を見捨てます」宣言をしたときに相談した仲間が「それでいいよ」って答えてくれた
Chacco 菊池さんがそんな風に考えてらっしゃるとは思いませんでした。
私が自分はよくやりきったなという気持ちでいまいられるのは、親には言ってませんけど、「親を見捨てます」宣言をしたときに相談した仲間が「それでいいよ」って答えてくれたからなんです。
菊池 私も全然それでいいと思います。
Chacco みんなそう言うんですけど、胸の内にはやっぱり罪悪感も湧いてしまうので、100%「それでいい」いう気持ちにはなれなくて……。
菊池 そっか~。でも、一緒にいたら結局メンタルを削られて、何も徳をすることがないので、いろいろなことが分かったいまは「介護しなくてもいいですよ」って言いたい。 法的な問題が起こると面倒だから、 今のうちから弁護士さんに相談してもいいと思います。
「法的な問題が起きるといけないから、いまのうちから弁護士さんに相談しておいた方がいいと思う」というアドバイスしたくなるほど、まったく介護をする必要はないと思います。
父は酔っぱらうと赤ちゃんみたいになっちゃうから、私が母であり、妻であるような役割を担わされた
――菊池さんが実家に留まったのは、妹さんがいたことも大きいんでしょうね。
菊池 それよりも、ウチの場合は母親が早くに亡くなったので、それで親子関係がより逆転していったと言うか。
父は酔っぱらうと赤ちゃんみたいになっちゃうから、私が母であり、妻であるような役割を担わされて、結果的に離れられなかったような気がします。
酔っ払いをひとりぼっちで残しておいたら確実に死ぬなと思って。でも同時に、母がもし生きていたら私も家を出ていくのになっていうことをよく考えていましたね。
――そういった意味では、今回の映画版は第三者の手も加わっていて、菊池さんも客観的に観ることができたと思うんですけど、いかがでしたか?
菊池 まず最初に、家庭環境悪いな~と思いました(笑)。
Chacco 自分のことなのに?(笑)
菊池 いままで渦中にいたので、分からなかったんですよ(笑)。
でも、映画で客観的に観たときに、私ではない、ヒロインのサキちゃん(松本穂香)が幼少期からこんな酷い環境で育ったら、大人になったときに自分の感情が分からなくなったり、生きにくくなるのは当然だし、こんなこと、子供にしちゃダメでしょって純粋に思えて。
逆に、自分がいま不器用なのはしょうがないことなんだなって思えたのも大きかったです。