Chaccoさんとお姉さんの関係もウチと似ていますか?
菊池 その通りです。Chaccoさんとお姉さんの関係もウチと似ていますか?
Chacco 一緒です、一緒です。3歳差というところも一緒だし、私がわりと父と仲がよかったんです。
菊池 あ~そこはウチの父と妹の関係に近いですね。
Chacco だと思います。私が家庭が壊れないように、父に優しくしたり、面白いことを言ったりしながら立ち回っていたんですけど、それも年頃の二十歳ぐらいになったらもう限界でしたね。
菊池 そうですよね。
私の親はお酒さえ飲まなければ本当に面白いんです。
Chacco 私の親はお酒さえ飲まなければ本当に面白いんです。
お父さんはいまどきの本を読んだり、映画もたくさん観ていたから、いろいろなことを知っていたし、釣りに連れて行ってくれて「美味しいぞ~」って食べさせてくれるから幼少期は大好きで。
「最近はお笑い芸人の〇〇が好きだ~」って言うお母さんとも「シブいね~」って普通に話ができるから、パッと見は仲のいい家族なんです。
それこそ、最近もお正月に子供を実家に連れて行って、みんなで枕投げみたいなことをして遊んだし、「まっとうな親になりたい」を描き上げてから少し経ったときには、仲よくしたいなら、老後の両親の面倒をみなよっていう考えも頭をよぎったんです。
でも、この映画のラストシーンで、心の中に積もり積もった負の感情はそんなに簡単には消えないというメッセージをきちんと受け取れたときに、自分の生き方を正当化することができて。両親のことは本当に好きだけど、信用はできない。
だからお金も貸さないし、その対象に自分を落とし込むことはないって改めて思うことができたんです。
菊池 「好きだけど、信用できない」ってすごい言葉ですね。
Chacco この言葉を見つけたときに、自分も驚きました。
いえいえ、私も父が好きですよ。
――その感情は菊池さんとちょっと違いますね。
菊池 いえいえ、私も父が好きですよ。
全然嫌いじゃないいし、漫画の最後のシーンで「忘れない」というワードを使ったのも、好きとも嫌いとも言えないけれど、忘れないということだけは確かだからそう入れただけで、実は嫌いじゃないんです。そこが難しいですよね。
「大嫌い」って言って親を完全に切る人もいて、その人にはその人の苦しみがあると思うけど、私にはその強さがないから、そういう人がちょっと羨ましい。
アルコール依存症の家族に悩んでいる方たちへ
――アルコール依存症の家族に悩んでいる方はまだまだたくさんいると思うんですけど、おふたりはその人たちにどんな言葉をかけられますか?
菊池 これは私の言葉じゃなくて、依存症の研究で有名な精神科医の松本俊彦先生の言葉なんですけど、先生は依存症の家族から逃げるにしても、逃げないにしても、相談先を先に作って、知識を身につけてから決断した方がいいと仰っていて。
それは本当にその通りだなと思います。依存症が病気だということがいまは分かったし、親子関係のただのこじれではない局面から見たら、また違った逃げ道も考えられると思うんですよ。
なので「まずは知識を身につけ、助けてくれる仲間を探すところから始めてください」と言いたいですね。
Chacco 私は高校生のころに運よく漫画家デビューできて、周りに編集部の人たちや同じ年にデビューした二十代から三十代の作家のお姉さんたちがいっぱいいたし、「私もそうだよ、そうだよ」って相談に乗ってくれる親代わりの大人の人とも偶然上手く出会えたんです。
でも、喋っているだけでは楽にならない部分があったのも事実で。だから、菊池さんが先ほど言われたように、大好きだけど、この部分は死ぬほど嫌いという二極の気持ちを混在させながら、アルコール依存症の家族と1メートル離れるのがいいのか? 1キロ離れた方がいいのか? その距離感をつかむのが精神衛生的にはいちばんいいんじゃないかなと思います。