ディズニー史上最も残酷で魅力的な「愛」を持ったヴィラン「マザー・ゴーテル」
魔法の花の力を独り占めして、400年も生きている女性「マザー・ゴーテル」。
幼いラプンツェルを誘拐して、塔の中に閉じ込めた張本人です。
黒いパーマヘアーに、ボルドー色のドレスと黒いマント。
ラプンツェルとは真逆のキャラクターデザインになっています。
ゴーテルのしたことは許される行為ではありません。
ラプンツェルと両親から、美しく尊い18年という歳月を奪い去ったのです。
それでも、私は、彼女の愛をなかったことにしたくありません。
それが恐ろしく残酷で、身勝手な愛情だとしても、です。
ヴィランの自覚のないヴィラン
ゴーテルは、自分のことをヴィランだと微塵も思っていません。
だって、全部彼女からしてみれば「仕方がない」ことなんです。
もともと、魔法の花を見つけたのはゴーテルだけです。
その花の力を使い、美しく、長く生きながらえたこと自体は、誰にも責められるようなことではありません。
ゴーテルからしてみれば、自分のものだった魔法の花を、王家が勝手に奪っていった、と思っても仕方がないことなのです。
魔法の花の力がないと死んでしまうゴーテルは、生きながらえるため、仕方なくお城に忍び込み、ラプンツェルの髪を一束切り取ります。
そう、初めからゴーテルは、ラプンツェルを誘拐するなんて、リスクの高い行為をするつもりはなかったのです。
しかし、切り取ってしまった髪には魔法の花の力は宿らず、ゴーテルはやはり仕方なく、ラプンツェルを誘拐します。
もちろん、ゴーテルのやったことを擁護するつもりはありません。
ですが、一連の彼女の行動を見ると、ゴーテル自身に「ヴィランの自覚がない」ことは明白です。
自分を悪者だと思っていないゴーテルは、彼女に出来うる限りの中で、ラプンツェルに対して愛情を示しています。
それは、ラプンツェルが空の光を見に行きたい、とお願いに対して、怒鳴ってラプンツェルを黙らせたあとのことです。
ゴーテルは、喧嘩の後の仲直りのために、ラプンツェルの大好物を作るために食材を手に入れ、空の灯りを諦めたラプンツェルに対しては、3日もかけて白い貝殻で出来た絵の具を買いに行きます。
3日ですよ? ゴーテルにとって3日もラプンツェルから離れることは、魔法の花の効力を考えても命がけです。
少なくともゴーテルにとってラプンツェルは、命をかけて誕生日プレゼントを買いに行っても良いと、値する存在なのです。
「母親」としてのゴーテル
映画のクライマックス、抵抗するラプンツェルを鎖で引っ張るシーンで、ゴーテルは最後まで「母親」としての言葉を口にします。
「ラプンツェルおいで、良い加減にしなさい! 逆らうのはやめるんだよ」と。
最後まで、彼女はラプンツェルの「母親」として振る舞うのです。
私の勝手な考えですが、ゴーテルにとってラプンツェルという存在は、「400年という長い年月の中のひとつの暇つぶし」なのではないかと思えてならないのです。
ラプンツェルを塔に連れ帰ったゴーテルは、落ち込むラプンツェルに対してこうも言います。
「外は闇に包まれて、身勝手で残酷な人ばかり。
太陽の一筋の光が差し込んだとしても、すべて消されてしまう」
まるで、自分がそんな人ばかりに出会ってきたかのような言い草です。
400年というあまりにも長い時間の中でゴーテルは、誰かを素直に愛したこともあるでしょう、母親になったこともあるでしょう。
ゴーテルは魔女ではありません。
魔法の花の力で、あまりにも長く生きすぎてしまった、孤独な女性です。
繰り返しますが、ゴーテルのしたことは許されることではありません。
ラプンツェルとの暮らしの中でも、彼女の自尊心を削る言動を繰り返しています。
そんな環境の中でもラプンツェルの心がまっすぐ育ったのは、彼女がディズニープリンセスであるからなのでしょう。
でも、それでも。
ラプンツェルが、塔から落ちていくゴーテルに対し、小さな子供が母親に向かって縋るように手を伸ばしたのは、まぎれもない事実です。
ゴーテルにとって、ラプンツェルとの暮らしが、悠久の時の中のほんのひと匙の暇つぶしだったとしても、愛がなかったわけではないのです。
たとえそれが、真実の愛でなくとも。
そう思うと、狡猾で恐ろしい悪女の「ゴーテル」が、なんだかすごく魅力的に思えてきませんか?
少なくとも、私はこの女性がとても好きです。
ちなみに、これは個人的な考察なのですが、塔から落ちたゴーテルは「死んだ」わけではないと思っています。
なぜなら、彼女は本当ならあの時代にいてはいけない人。
時間というものには逆らうことは、神にすら許されない行為なのです。
魔法の花の力を失ったゴーテルを、あの時代に繋ぎ止めておく力はありません。
そのため、ゴーテルは塔から落ちて死んだのではなく、時間という不可逆の力に飲み込まれて行ったのではないでしょうか。
その他のキャラクターも魅力的!
長くなりすぎたのでシャッと行きましょう。
マキシマス
コロナ王国最後の砦。
とにかく有能な白馬で、リンゴが好き。
短編作品『ラプンツェルのウェディング』では、パスカルと一緒に大活躍をします。
スタビントン兄弟
フリンにまんまと出し抜かれる、盗賊の兄弟。
もみあげと顎が印象的。
牢屋に入っているシーンを見るに、威勢の良いだけの小心者。
ラプンツェルの両親
赤ちゃんの頃に誘拐されたのに、髪の色も違う、成長したラプンツェルを一目見て娘だと気付く、真実の愛を持った人たち。
消えたラプンツェルが帰ってくることを18年間ずっと願い続けてきた。
お母さんがラプンツェルと同じ顔をして笑うので、なんかもうそれだけで泣ける。
いかがでしたか?
『塔の上のラプンツェル』は、このように様々な魅力的なキャラクターが登場する作品です。
もう何度も見たよ、って方も、いつもとは違う視点でキャラクターたちに思いを馳せて見てくださいね!