『映画ビリギャル』『ライチ☆光クラブ』『ちはやふる上の句・下の句』『ミユージアム』などの話題作に次々に出演し、硬軟の変幻自在の芝居で注目を集めている若手の実力派俳優・野村周平。
そんな彼の最新主演映画は、ライトノベル界屈指の壮大な青春ミステリーを前後篇の2部作で完全実写映画化した『サクラダリセット』。
本作では驚異的な「記憶保持」能力を持つ主人公の高校生・浅井ケイに扮しているが、初めて台本を読んだときは謎と仕掛け、幾つものルールが散りばめられたそのパズルのような内容に理解するのが難しかったという。
果たして、何がほかの映画と違ったのか?
野村にそのいつもとは違った撮影の苦労を振り返ってもらいつつ、本作の特殊な設定にちなんだ自身の本音も激白してもらった。
いつもと違った撮影での苦労話
『サクラダリセット』は「いなくなれ、群青」で第8回大学読書人大賞を受賞した新鋭・河野裕が09年に発表し、カルト的な人気を誇っている青春ミステリー・シリーズ。
特殊な能力を持つ者たちが暮らす街“咲良田(サクラダ)”を舞台に、驚異的な「記憶保持」能力を持つ高校生、浅井ケイが、世界を最大3日分巻き戻す(過去をやり直す)ことができる「リセット」の能力を持つ春埼美空(黒崎結菜)とともに、2年前に死んでしまった同級生・相麻菫(平祐奈)を蘇らせるため、仲間たちのさまざまな能力を組み合わせた作戦に挑む姿を描き出していく。
だが、過去と現在を何度も往来し、様々な能力が入り乱れ、それによって物語の展開が大きく変わる本作の展開は一筋縄ではいかない。
頭をフル回転させて観なければ、何が起きているのか? どうしてそうなるのか?
謎もトリックも理解不能になり、映画が描く真実には到底辿りつくことができない。そのことは、観客以上に、それを体現し、伝えなければいけない野村周平ら演者にとって最もリスキーな挑戦だった。
「最初に台本を読んだときは、全然頭に入ってこなかったですね(笑)。でも、深川栄洋監督がその都度説明してくれると言ってくださったので、監督に身を任せてやろうという感じで撮影に臨みました」
とは言え、本作には「記憶保持」能力を持つ浅井ケイ、世界を最大3日分巻き戻す=「リセット」の能力を持ち、ケイと行動を共にしている春埼美空のほかにも、「声を届ける」ケイの親友の中野智樹(健太郎)、「モノを消す」村瀬陽香(玉城ティナ)、「記憶を操作する」岡絵里(恒松祐里)、「物体を変化させる」宇川紗々音(岡本玲)、「能力をコピーする」坂上央介(岩井拳士朗)が次々に登場。
ケイはその時々で彼らの能力の組み合わせを変えて、亡くなった相麻の再生に挑み、街に蠢く大きな陰謀を阻止しようとするのだ。
「今回は本当に説明ゼリフだらけでした。
それぞれの能力を説明しないと観ている人に分からないから、それは仕方がないことだけど、説明ゼリフはもう一生言いたくない!
撮影中も、自分の能力については自分で言ってくれ!って何度も思いましたね(笑)」
しかも、ケイだけは「リセット」後も記憶を失わないため、「リセット」前と「リセット」後での感情の変化も表現しないといけない。
加えて、同じ日に前篇のあるシーンと後篇のあるシーンを交互に撮影する日もあった。
「ケイは能力的に感情が変わらないといけない。
だから、シーンによって『リセット』後は悲しんでいたり、喜んでいたり、いろいろだったけど、前篇と後篇の撮影がざっくり20日間ぐらいのボリュームですから、普通だったら、頭の中が混乱しますよ。僕もついていくのが結構大変でした。」
そんな野村が今回いちばん大変だったシーンは、“咲良田”の未来に対して大きな野望を抱いている管理局対策室室長・浦地正宗(及川光博)に向かって、とうとうと自らの想いを話し続けるシーンだったという。
「あの長ゼリフがいちばんしんどかったですね。
ひとつのシーンのセリフが5ページ、8ページってだんだん増えていって、あそこは10ページぐらいあったから、大変でしたね。」
苦労した後、映画を観た感想は?
それでは、完成した映画を前後篇ともに観た感想は?
「すごく良かったです。字面では理解するのが難しかったので、映像になってもお客さんがみんな置いていかれるんじゃないかなって心配していたんです。
でも、微妙な難しさというか、ちゃんと考えなきゃ解けないテイストを保ちつつ、ストーリーがしっかり分かるものになっていたので、ホッとしました」
本作は特殊な能力を持った者たちが次々に登場し、時制が錯綜する特殊な設定ではあるが、そこで描かれているのは友情や青春、恋愛といった思春期ならではの瑞々しい感情。
そこに自身の想いを重ねて観たり、鑑賞後にそのことについて友だちや恋人と話してみると映画の面白さがより増幅するので、ここから先は、野村にもこの映画に込められたキーワードごとに自身の考えを語ってもらった。