最高の野外ライブ『GO TO SICKS』

2015~2016年にかけて47都道府県ツアーを行ったBugLugは、レーベルのアジアツアーなどで経験値を積みつつ、新たなチャレンジをライブで重ねて次なる高見を目指す。それが、2016年4月9日に行われた日比谷野外大音楽堂のワンマンライブ『GOT TO SICKS』だ。

「5to6」とも読めるタイトルは、5周年から6周年へと移り変わり、次なるBugLugへと移り変わっていくというメッセージが込められていたのだろう。

2014年の『太陽と月が在る限り』以来、BugLugにとっては2度目の日比谷野外大音楽堂ワンマンだったが、正直に言って過去最高のライブだったと思う。これまでの葛藤も、47都道府県で得た自信も、過去のBugLugが培った実力も、ファンへの愛情も、全てがこのワンマンのセットリストに詰まっていたように思う。

このライブは『BugLug LIVE DVD「GO TO SICKS」』としてDVDでも発売されているが、BugLugのファンならずとも必見の一枚だろう。筆者はもちろん、会場で号泣した。

『BugLug LIVE DVD「GO TO SICKS」』

しかし、このライブの約1ヶ月後の2016年5月7日、ヴォーカルの一聖が転落事故によって頭部に負傷を負い、意識不明になったのだ。

ヴォーカル一聖の負傷、そして再起~武道館へ

頭部負傷で意識不明、そして緊急手術、集中治療室に2週間。誰もがBugLugはこれからどうなるのか不安に思ったに違いない。日比谷野音でのワンマンも大成功に終わり、これから全国ツアーに出ようと思っていた矢先の活動休止……。何よりもメンバーの不安はいかばかりだったか。

しかし、一聖は約2週間の治療の末、2016年5月20日、奇跡的に意識を回復した。もちろん頭部への負傷の影響は拭いきれないまでも、生きていただけでも奇跡的な重傷だったのだ。

事故直前に発売されたシングル『V.S』の中で、一聖が書いていた歌詞にこんなものがある。「生きたいというよりかは まだ死ねないという方が 潔く踏ん張れるんだ」。一聖の意識が回復するまでの間、筆者はずっとその歌詞を思い返していた。

一聖ならきっと帰ってくる。そう一番信じていたのはきっとメンバーで、実際に帰ってきた一聖の“BugLugという居場所”を守るために、BugLugは一聖以外のメンバー4人で活動を再開した。

レーベルのイベント「治外法権VOL.6」を一樹、優、燕、将海の4人で周り、毎年恒例8月9日の「89の日」フリーライブも4人でヴォーカルワークを回しながらやり切った。その代々木公園野外ステージでのフリーライブ「自由~ASOVIVA~区域」の様子は、『BugLug LIVE DVD「GO TO SICKS」』にも収録されている。

そんな4人の精力的な活動と並行して、一聖もリハビリを開始したという報がファンのもとにももたらされる。「もしかしたらステージに復帰できるんじゃないか?」そんなファンの期待が高まる中、2017年1月7日のレーベルイベント『治外法権-新春だょ全員集合!!2017-』で一聖は1曲だけステージに復帰し、その場で一聖の復帰ライブとなる日本武道館ワンマン公演が発表されると、会場は大歓声に包まれた。

その際の音源「TIME MACHINE (2017.1.7 TOKYO DOME CITY HALL)」は、4月5日に発売されたBugLug初のベストアルバム『絶唱~Best of BugLug~』にも収録されている。

『絶唱~Best of BugLug~』

ここまで見てきても、BugLugというバンドの歩む道がいかに波瀾万丈だったかがわかるだろう。

だが、彼らは常にライブの中で生きてきた。ライブで泣き、ライブで笑い、ライブで挫折し、ライブで栄光を掴んできた。彼らの最新の音楽は、常にライブの中に在った。

2017年5月7日、武道館で“今のBugLug”をしっかり見せつけてくれることだろうと信じている。間近に迫ったその日を、映像作品を観ながら楽しみに待つことにしよう。

 フリーランスエディター・ライター。原宿系ファッション誌の編集者などを経て、2014年独立。ファッション、アニメ、マンガ、ヴィジュアル系、腐女子などのカルチャー分野について執筆。