青天目澄子役の松本穂香(左)と兼平豊子役の藤野涼子

 高度成長期の日本を舞台に、有村架純演じるヒロイン・谷田部みね子の成長物語を描いたNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」。茨城から集団就職で上京したみね子が働くトランジスタ工場の同期の工員・青天目澄子役の松本穂香と兼平豊子役の藤野涼子が、朝ドラ初出演の喜びと撮影エピソードを語った。

-朝ドラ初出演が決まった時の感想は。

松本 朝ドラに出ることが夢だったので、オーディションに合格したと聞いた時はマネジャーさんがうそをついていると疑うほどびっくりしましたし、家に帰った瞬間に、玄関で泣きました。こんなに出演シーンが多い役だとも思いませんでした。

藤野 まさか合格するとは思わなかったので、連絡がきた時は驚きました。台本をもらってからは、日常から朝にふさわしい笑顔でいようと決めました。

-澄子は福島出身で、マイペースで食べることが大好きという役柄ですが、シンパシーを感じますか。

松本 周りからは「そのまんまだね」と言われたり、監督からも「この役は自分全開で自由にやっていいよ」と言われたりしました。似ているところが多くて大好きな役なので、第一印象のまま演じています。

-豊子は青森出身で、頭が良くて仕事もできるキャラクターですが、演じてみてどうですか。

藤野 豊子は頭が良くて言葉もバンバン出てくるけど、私はすぐに言葉が出ないし、私の性格とは逆なので、最初は豊子になれるか不安でした。でも、徐々に皆が「普段から豊子に見えるよ」と言ってくれるようになったので、ちゃんと役に入れていると自信がつきました。役づくりとしては、豊子はロシア文学が好きなので『アンナ・カレーニナ』などを読んだりしました。

-皆さん方言に苦労されているようですが。

松本 いろんな方言が飛び交っているから分からなくなっちゃう…。さっきも方言指導の先生から「ちょっと秋田に流されているね」と注意されました。実は、「今日は(雪は)そんなに降らねーですよ」というせりふで、“よ”のイントネーションは上げちゃ駄目なのに何回やっても上がるから、「降らねーです」って勝手に変えたこともあります(笑)。

藤野 祖父母が青森出身なので、特に苦労はなかったです。

-役のどの部分に注目してほしいですか。

松本 食べるシーンではせりふが聞き取れないんじゃない?というぐらいメチャメチャ頬張るんですが、そんなふうにおいしそうに必死で食べている“澄子らしさ”を見てください。

藤野 歌は得意ではないですが、クランクイン前から練習したので、段々うまくなっていくコーラスシーンを見てほしいです。

-澄子と豊子は全くタイプが違ってそりが合いませんが、実際のお二人はどうでしょうか。

松本 けんかのシーンで豊子に押されたら、その倍は押すようにしていますが、普段は仲良しです。二人とも緊張しいなので、現場ではリラックスできる昆布の体操みたいなことをよくやっています。

藤野 穂香ちゃんは発言が面白くて場を和やかにしてくれるし、私が落ち込んでいる時は励ましてくれるので助かります。でも、撮影中は私もライバル心を持ってやっています。けんかのシーンはリハーサルから結構本気です!

-主演の有村さんの印象はいかがですか。

松本 どっしり構えていて、やる時はやるし、その場の雰囲気を見てリラックスさせてくれたりもするし、頼もしい先輩です。

藤野 うん、頼もしい。最初は頑張れるのかという不安もありましたが、せりふをかんだり、間違えたりしても「全然大丈夫だよ」と優しく言ってくださるし、見守ってくれている感じがして、大変だけど頑張ろうという気持ちになりました。

-気になる共演者はいますか。

松本 時子役の佐久間由衣さんはきれいで格好良いからクールな人に見えるけど、話すと、いい意味で普通ですてきです。お芝居中、私が由衣さんを好きなのか、澄子が時子を好きなのか、分からなくなるぐらい好きです。

藤野 幸子役の小島藤子さんの面白さを尊敬しています。優子役の八木優希さんも楽しい人で、二人ともラフに話しをしている中で、「よーい、スタート」ですぐに役に入れるところがすごいなぁと思います。私は現場に入った時から集中していないと役になれないので…。

-お二人は「あまちゃん」で朝ドラに憧れを持ったそうですが、夢が現実となり、実際に本ドラマに出演している今のお気持ちは。

松本 澄子たちみたいに集団就職で上京した人たちが頑張ってくれたから今の日本があるということを多くの人に知ってほしいし、そのためにもちゃんと澄子として生きたいと思います。朝ドラにずっと憧れていたので、一瞬一瞬、皆との時間を大事にして、役としても自分としても成長したいです。

藤野 今の日本を作ってきた人たちを描いたこのドラマで、「私もこういう経験したな」とか、「こういうことを考えていた人がいたんだ」「楽しそうだな」と思ってもらえればうれしいです。そして私も一瞬一瞬を大切に、一生懸命に作ったものを届けて、朝から皆に笑顔になってほしいです!

(取材・文/錦怜那)