直虎(柴咲コウ)の計らいにより、晴れて井伊の人々からその存在を認められた龍雲丸と盗賊団の仲間たち。直虎との絆も徐々に深まり、今後ますますの活躍を見せることになる。前回に続いて龍雲丸役の柳楽優弥が、盗賊団のメンバーとの共演や、役に込めた思いなどを語った。
-第22回は一緒に木を切ったり、酔っ払って絡まれたり、直虎との共演場面が見どころでしたね。
木を切るシーンの、(直虎を)後ろから抱え込む体勢を“バックハグ”というそうですね。恥ずかしかったですけど、今まで経験したことのないシチュエーションだったので、ここぞとばかりに楽しみました。共同作業です(笑)。酔って絡まれる場面も、モテた気分になれたのでうれしかったですね(笑)。
-盗賊団のメンバーとの共演はいかがですか。
心強いです。始まる前は、個性が強過ぎる人がいたらどうしようと心配していました。みんなとコミュニケーションを取ってやっていきたかったので。でも、みんなすごくフレンドリーだったので安心しました。知識が豊富な人ばかりでいろいろな話を聞けたり、チームワークは抜群です。とても活気にあふれたチームなので、一緒にいてすごく楽しいです。
-それぞれのメンバーの印象は?
いろいろなことを知っているマキタスポーツさんからは、しゃべり方について「落語を参考に」というアドバイスをもらえたのが助かりました。前田航基くんは僕と同じように、デビュー作が是枝(裕和)監督の『奇跡』(11)で、撮影中に陣中見舞いに行ったことがあったので、話が合いました。吉田健悟くんとはお互いの不安をぶつけ合ったりしていました。あと、僕は運動が好きなので、真壁刀義さんには筋トレのやり方について聞きました。プロレスの試合を見たいという話もしたので、みんなで行こうと思っています。
-龍雲丸は、その個性的な面々を束ねる“頭(かしら)”という立場ですが、どんな気持ちで演じていますか。
自分のこれまでの経験を生かして、映画に主演するようなテンションで演じています。最初はすごく悩みました。こんな個性豊かなメンバーの中で、どうやって頭の雰囲気を出せばいいのかと。だけど、風貌や見た目で“いかにも”という雰囲気を出すより、みんなと楽しくやっていたら結果的に頭になっていた、というタイプの方が僕には合っていると思ったので、そんなつもりでやっています。僕が「やるぞ!」と言うと、みんなが「おー!」と応えてくれるので、こっちのテンションも上がります。この軍団の頭で良かったと本当に思います。
-メンバー同士で役づくりの相談などはされるのでしょうか。
そうですね。マキタスポーツさんや真壁さん、吉田くん、前田くんの他にも、エキストラさんを含めて10人ぐらいいるので、時代背景や「吉田くんの役柄、龍雲丸のことが好きだよね」みたいなことをみんなで話し合っています。
-今後、盗賊団はどうなっていくのでしょう。
登場して間もない20回台の前半は、龍雲丸と盗賊団の明るく楽しい個性が発揮されていくので、楽しんでいただきたいです。後半になると、徐々に龍雲丸の過去も見えてきて、盗賊団も明るいだけではないシリアスな状況になっていきます。
-柳楽さんはこれまで、『許されざる者』(13)や『合葬』(15)といった時代劇にも出演経験がありますが、他の時代劇と大河ドラマの違いはどんなところに感じますか。
大河ドラマは他の時代劇と比べて、見て下さる方の数も多くて、層も幅広いということが一番違います。特定の層を狙った作品に比べて、圧倒的に大衆性が問われます。『合葬』のようなメッセージ性の強い映画も楽しいですが、多くの人に見てもらえる大河ドラマには、自分をスキルアップさせていく楽しさや緊張感があります。
-過去の時代劇の経験が、今回役立っている部分はありますか。
殺陣の経験は役に立っています。馬に乗ったり、所作を学んだりした経験も、今回は直接関係ありませんが、気持ちの上で作品になじみやすくなっているので、無駄ではありません。そういう精神が好きで個人的に武道を習っていますが、道場に通っていると、気持ちがビシッとして人生楽しいです。まったく自由な状況の方が、逆に不自由に感じてしまいます。
-柳楽さんご自身と龍雲丸で似ている部分はありますか。
龍雲丸は、自由といいつつ過去にとらわれている人間です。僕にもそういう経験があるので、演じる上でうまく生かせると思いました。僕は節目節目でいい人たちに出会えて、いいアドバイスをもらうことができました。龍雲丸にとってはそれが直虎であり、直虎も龍雲丸からいい刺激を受けているのではないかと感じています。ただ明るいだけではない、そんな龍雲丸の内面に絡む部分も、話が進むにつれて演技で見せていけると思うので、ぜひ注目してほしいです。
-アウトロー的なイメージがある柳楽さんは、龍雲丸という役がぴったりハマっている印象です。そんなふうに見られることをどう思いますか。
違うんですけどね(笑)。でも確かに、ものすごい暴力で相手をボコボコにしたり、両親がいなくなったり、フラれたりする役が多くて、ハッピーエンドを迎えられることが少ないんです。そういう、実際とイメージのギャップが俳優の面白さでもあるのかなと思います。“いい人そうに見えて実は嫌なやつ”よりは“すごく怖そうだけど実はいい人”の方が、長く仕事が続けられそうですし(笑)。もう少し穏やかな印象を持ってもらえたら…とは思いますが。龍雲丸は男っぽいだけでなく、直虎と心を通わせる部分もあるので、今回はちょっとした挑戦です。しっかり楽しみながら頑張りたいです。
(取材・文/井上健一)