10月25日にザ・シンフォニーホール、10月31日にサントリーホールで開催する「及川浩治ピアノ・リサイタル『名曲の花束』」より、及川に話を聞いた。
今回の演奏会は、実にバラエティに富んだ選曲。バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」のピアノ版、そして、もともとヴァイオリンの曲である「シャコンヌ ニ短調」と編曲もので幕開けとなる。「『シャコンヌ』はブゾーニの編曲で、メロディに和音を多く加え、ヴァイオリンとは一味違い、オルガンのような迫力のある重音の響きを楽しんで頂けると思います。」と及川。
前半はショパンの「雨だれ」やエルガーの「愛のあいさつ」、リストの「愛の夢」など人気の小品が並び、後半はベートーヴェンの交響曲第5番「運命」のピアノ版を演奏する。「今回演奏するのは、リスト編曲版です。リストの編曲の場合は、単に曲の雰囲気を味わうオーケストラの代用品としてではなく、コンサートで演奏できるように作っているので、音がとても充実しているんですね。音域も広く、それをピアノ1台で、指10本で表現するわけですから、とても大変です。基本的にリストの編曲もピアノの二段譜で書かれてはいるのですが、オーケストラのスコアをイメージして演奏しなければならないですね。」
「交響曲第5番は、自分にとってまさに「運命」の曲。」という及川に、今年のコンサートに『運命』を初めて演奏することについてうかがうと、「僕が生まれて産婦人科から初めて及川家の実家に連れて来られた時に、父が大音量で「運命」のレコードをかけていたそうで、その影響からか、小さい頃からベートーヴェンを神様のようにあがめていました。最後に〈希望〉や〈夢〉、〈勝利〉に向かっていく構成は、ベートーヴェンの音楽に多く見られますが、「運命」はその特徴が特に凝縮されています。コロナウイルスによって大変な思いをしている方が多くいる中で、今こそ最後に〈打ち克っていく〉というベートーヴェンの音楽をお届けしたいと思っています。」と意気込む。
「先日様々な演奏家の方々とベートーヴェンばかりを演奏するという機会がありました。その時、「ベートーヴェンに救われた」というのが、演奏家みんなの意見でしたね。ベートーヴェンは、人に希望や勇気を与えてくれるということを改めて実感しました。だから、ベートーヴェンはいつの時代も愛されているんだと思います。ベートーヴェンからもらった勇気や希望を、僕の演奏を通して、集まってくれた聴衆の皆さんと共有したいと願っています。」と締めくくった。
公演は、10月25日(日)大阪・ザ・シンフォニーホール、10月31日(土)東京・サントリーホールにて。チケット発売中。