1.ホメ力
横山さんによると、スネ夫のコミュニケーション力を支える大きな要素として、この“ホメ力”があるという。事実、スネ夫はホメることで、ガキ大将のジャイアンから、本作のマドンナ・しずかちゃんまで、心を捉えることに成功している。
例えば、スネ夫がジャイアンをあの手この手で賞賛し、「心の友よ!」と感激させているシーンに見覚えはあるだろう。本書を読むと、スネ夫のホメ言葉には「アドバイスをしながらホメる」「キツイことを言いつつホメる」など、舌を巻くテクニックが隠されていることがわかる。“正直”な言葉や態度はそれはそれで重要ではあるが、それによって人を傷つけてしまうなら、スネ夫のように、人を幸せな気分にするコミュニケーションを取りたいものだ。
「あるエピソードでは、しずかちゃんに対して“きれいな花はきれいな人にこそふさわしいのさ”というセリフとともにバラの花をプレゼントし、素直に喜ばれています。キザなように見えますが、きちんと相手の心に響いていることがポイントです」
2.セルフプロデュース力
スネ夫がよく使うセリフに、「うちのパパが○○と知り合いでね」というものがある。虎の威を借るなんとやら……という見方もできるが、本人の実力とはあまり関係ない部分で“何となくスゴい”と思われる「後光効果」をもたらす、有効な手法だと言える。弱い立場にいるほど、「人脈アピール」は効果的だ。
「スネ夫は持てるものを最大限に利用して、その場でのコミュニケーションに全力で臨みます。普通、調子のいい話は長続きしないものですが、スネ夫は次から次へ、手を変え品を変え、人の興味を喚起する話題を持ってくる。だから、周りの人も無視できず、一目置くようになるんです」
3.トーク力
プレゼンテーションの場でも、あるいは合コンの場でも、必要になるトーク力。スネ夫は、この能力にも長けている。
「例えば、スネ夫は食事に関する自慢を度々しています。例えば、飛行機に乗って札幌ラーメンを食べに行った、というだけのエピソードでも、それを生き生きと話すから、ジャイアンはよだれを垂らしまくってしまうんです(笑)」
ドラえもんの秘密道具とはまた違う、リアリティのある“うらやましさ”。それを演出し、話題を広げるスネ夫は「MC向き」と横山さん。話題にするテーマについてしっかり勉強し、相手が“食いつく”ポイントを押さえる。スネ夫は口コミ力が非常に高く、商品やサービスそのものに増して、人の感覚が重視される知価社会(堺屋太一)において、必須の能力を備えていると言えそうだ。