4.愛され力

あらためて『ドラえもん』の各話を振り返ってみると、スネ夫は決して“やっかい者”のような扱いされておらず、それどころか周囲の人に愛されていることがわかる。スネ夫は人に好かれることに積極的で、大人の前で“いい子”を上手く演じ抜くエピソードも多い。

「他力本願の姿勢では、“嫌われない”という現状維持が精一杯。その場に適応した態度を取り、好ましい評価を受けることは、人や社会とのかかわり合いのなかで重要です。『スネ夫は空気が読める』と言い換えてもいいでしょう」

俯瞰の視点から観ている読者/視聴者は「調子のいいやつだ」と思ってしまうかもしれないが、周囲の人は、スネ夫の行動を気持ちよく受け入れている。仕事にしろ、恋愛にしろ、自分自身の能力や性格とは無関係に“えこひいき”されたい人は、スネ夫のように「人に好かれるシナリオ」を考えてみよう。

5.リスクマネジメント力

仕事に限らず、日々を安全・快適に過ごす上で欠かせないリスクマネジメント力。スネ夫はこれについても、優れた能力を見せている。横山さんのまとめによれば、スネ夫が不機嫌そうなジャイアンの顔を見るなり、「こんなときに近よるとろくなことがない」と、のび太やしずかちゃんを広場の外に連れ出す……というシーンがある。

「ジャイアンは少しかわいそうですが、スネ夫は想像力を働かせて先にあるリスクを察知したばかりか、その後に楽しく穏やかな時間を過ごすことに成功しています。リスクを恐れて萎縮するのではなく、のびのびと前向きに生きる能力は、今の時代に必須でしょう」

リスクに敏感でありながら、それ自体を楽しんでいるようにも見えるスネ夫。その姿勢は、リスクを回避するための戦略的思考と想像力に裏付けられているようだ。


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これらのポイントはほんの一例で、本書には「人の尊敬を集める方法」
「謝罪力」「ことわざや慣用句の巧妙な使い方」「人の心を読むスキル」など、スネ夫流のメソッドが網羅されている。
あらためて、意外とスゴい男だった「骨川スネ夫」の魅力とは?

「好奇心が旺盛で、常識にとらわれないところですね。
スネ夫は常に夢や目標を持ち、その実現のために積極的な姿勢を崩さない。いくら失敗してもへこたれない、のび太にも学ぶべき点はありますが、
スネ夫はよりポジティブで、自分に正直な生き方をしている。

 
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暗い世の中で自分を抑え込み、せっかく持っている能力を発揮しきれていない人も多いと思います。スネ夫のように、仮面やベールを取ってみませんか?」

去る9月3日、ドラえもんの「誕生」(2112年9月3日)まで100年を切った。“生誕100年前”を記念してさまざまな企画が立ち上がるなか、過去のアニメや劇場版を「スネ夫」に注目してみると、より新鮮な気持ちで楽しめるかもしれない。

 

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『ドラえもん』のキャラクター、あなたはどのタイプ? [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/8986 ]

はしかわ・よしひろ 1981年、神奈川県生まれ。編集プロダクションblueprint所属のライター、編集者。ビジネス・ネットサービス・グルメ・映画・音楽・コミック・ゲーム・スポーツなど、幅広い分野で取材・執筆を担当。構成を担当した書籍に『まな板の上の鯉、正論を吐く』(堀江貴文/洋泉社)、『伝説になった男~三沢光晴という人~』(徳光正行/幻冬舎)など。