今この瞬間が愛おしくてたまらなくなる、ディズニー/ピクサー最新作『ソウルフル・ワールド』レビュー。
今だからこそ受け取りたい、シンプルで温かいメッセージとは?
ジャズ・ピアニストへの夢が叶う直前、不慮の事故で魂(ソウル)の世界へ迷い込んだ、音楽教師のジョー。
生きる目的を見つけられない、迷える魂の22番と出会い、人生のきらめきを取り戻す旅へと出発します。
何としても地上へ戻りたいジョーと、何としてもソウルの世界に居座り続けたい22番が、共に過ごすことによって、お互いに見えていなかったものに気づいて行きます。
2人が辿り着いた先には、世界が今までよりほんの少し色づいて見える、素敵なメッセージが用意されていました。
「死」から見えて来る「生きるということ」
予告編で見ていたので、ジョーが事故に遭って=死んでしまって、ソウルの姿になる事自体は予習済み。
ですが、これが本当に物語の冒頭でサクッと描かれ、そこまでがプロローグ的な演出なのは、かなりドキッとしました。
「主人公が死ぬ」という重大な出来事が、物語の導入部分にサクッと使われ、その後の「人生のきらめき探し」こそがメイン題材であることを、こんなにも軽やかに描ける手腕に脱帽。
導入部分の「死」があるからこそ、その後の「生きること」が見えて来る作品なんですよね。これ。
"今"観たい作品
昨今の情勢で、旅行やコンサート、パーティーやスポーツ観戦など、今まで当たり前に出来ていた、非日常な体験を得ることが難しくなっています。
もしかしたら、生きる目的を少し見失いかけていたり、家にこもって鬱々と将来の展望なんかを考えてしまう人も、少なくないかもしれません。
でも、こんな時だからこそ、『ソウルフル・ワールド』を見て欲しい。
少し疲れた人たちに、そっと寄り添う温かいメッセージであふれているんです。
なにも、非日常な体験だけが幸せじゃない。
見上げた空が青くて綺麗だった、今日食べたものが最高に美味しかった、ヘアスタイルがクールに決まって嬉しい。
こんな、一見ささいな事だとしても、日常にきらめきは溢れてるんです。
ピアノの才能だったりスポーツの才能だったり、抜きん出たものがなくてもいい。
目的や夢に向かって、がむしゃらに頑張る事だけが美徳じゃない。
ふと見上げた空を美しいと思える感性だって、その人の特技だし、きらめきなんですよね。
見た後にちょっとだけ世界が美しく見える、一瞬一瞬を大切に生きたくなる、そんなシンプルかつポジティブなメッセージを受け取れる作品なんです。
ピクサーが更なる高みへ…
ジョーと22番、そして見ている私たちがどういう過程で、このシンプルなメッセージに辿りついたのか。
未見の方は、ぜひご自身の目で確かめてみて下さい。
巧妙な心理描写と仕掛けの数々に、もう脱帽モノ。
映像や音楽の真新しさも相まって、ピクサーがまたひとつ、次のフェーズへ進んだなと感じさせられる作品でした。
ピート・ドクター監督、すげえわ。