2つの世界を行き来する映像美
昨今のピクサーの映像技術には目を見張るものがありますが、『ソウルフル・ワールド』も、最新の映像美と技術で我々視聴者をブン殴って来ます。(褒めてます)
まず、楽器の演奏シーン。
実は筆者も演奏者の端くれなので痛いほど分かるんですが、楽器を演奏する手先って、本当に繊細で複雑なんですよ。
指を置く角度が1ミリでも違うと、狙い通りの音は出ません。
指だけでなく手首や腕全体、果ては体全身を使って音楽を表現するんですが、アニメーションとは思えない再現度とクオリティに、度肝を抜かれました。
演奏シーンだけ一瞬実写かと思ったぐらいです。
かと思えば、架空の世界であるソウルワールドも凄い。
なんだか輪郭がモヤっとしていたり、3Dアニメーションの中に巧みに2Dを組み込んで来たり、色彩がガラッと変わったり…
特に、現実とソウルワールドの行き来の描写が凄まじく、全く新しい映像を体験する事が出来ました。
これは言ってもしょうがないけど、映画館の最高画質で見たかったな…!
音楽も大満足
そして、劇中流れる音楽にも大注目です。
一流のジャズミュージシャンが多数キャスティングされており、公開前から楽しみにしていたのですが、演奏シーンのアニメーションと相まって、もう期待以上!
地上シーンのジャズBGMと、魂の世界のどこか抽象的で近未来なサウンドの対比が、とても面白かった。
1回で2つの作品を観ているようでした。
ピート・ドクター監督の、飽くなきチャレンジ
『インサイド・ヘッド』で、頭の中や記憶のメカニズム、感情たちを描いたピート・ドクター監督。
更に難しい題材である”魂の世界”を、よくアニメーション化したなと思いました。
その想像力?というか、発想力に加えて実行力に脱帽です。
感情よりもさらに内面に踏み込み、人のよりデリケートな部分に、踏み込む勇気が凄い。
一歩間違ったら、人間の闇みたいなところに触れかねないし、ともすれば説教臭くなりやすい題材でもあるだろうし。
その、ある種タブーのような部分を、ここまでポップにエンタメ作品として完成させる手腕に、拍手喝采状態でした。
観るタイミングや年代によっても、刺さり方が違ってくるんだろうなとは思いますが、今、この作品のあたたかなメッセージに触れることが出来て、本当に良かった。
躍起になって探し回らなくても、そこかしこに散らばっているきらめきと幸せを、丁寧に感じて生きて行こうと思います。
『ソウルフル・ワールド』
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