■“探偵は尾行と張り込み”という間違ったイメージ
ドラマや小説の影響でしょうか。探偵といえば尾行と張り込みばかりやってる先入観がいまだに強いようです。でも本職の人間からしたら「何十年前のハナシだよwww」って感じです。もちろん尾行や張り込みは今でもやります。けれどそれら(行動調査と呼んだりします)は調査が大詰めになった最終段階でやるものです。いつもやっていたら人員と時間がいくらあっても足りません。第一、調査費用がかかりすぎて依頼者が先に音を上げてしまいます。
大体、尾行や張り込みなんて、ぶっちゃけド素人でも一ヶ月ほど特訓したら十分実戦レベルになれます。決してプロだけの特別なスキルじゃないんですよ。
プロの探偵が素人と決定的に違うのは行動調査じゃなくて‥‥「データ調査」なんです。データ調査は浮気調査のように写真の証拠提出がいらない案件、人探しや個人信用調査(借金の調査)で特に真価を発揮するプロだけの手法です。現代の探偵はこれを駆使して、事務所から一歩も出ずに依頼を解決してしまえるのです。
■パズルのような組み合わせで個人データを暴く
データ調査には沢山の種類があります。冒頭で引用したニュース記事は 携帯番号→契約者の氏名・住所という調査に使うタイプでしたね。他にはこんな種類があります。
●自宅電話番号から→契約者の氏名・住所
●氏名、生年月日から タイプ1→サラ金とクレジットカードの使用歴、事故歴(返済遅延や自己破産)
●氏名、生年月日から タイプ2→職歴(社会保険に加入している職歴のみ)
●氏名、住所から→生年月日、世帯主名、本籍地(転居数年以内なら引っ越し先まで出ます)
●氏名、本籍地から→戸籍記載事項(住民票の移動履歴も全部まとめて出せます)
とても多すぎて書ききれません。まだまだ他には銀行口座の預金残高を出したり、名字だけから本人の住所候補地を絞り込んだり沢山の情報ルートがあるんです。
探偵は依頼者からコレコレを調べたいんですと言われたら、頭の中でパズルを組み立てるように調査方法を考えていきます。例えば「旦那の携帯に浮気相手らしい番号が登録されていた。この人の素性を調べて下さい」みたいな依頼ですね。これ非常に多いです。
この時はオーソドックスに携帯番号→契約者氏名・住所 というルートを使えば一発で解決します。そこから得られた氏名・住所をもとに本人を尾行し、決定的な浮気の証拠写真やビデオを撮るまでが大体1つのミッションですね。証拠を取ってから後は法務のプロ、弁護士さんに引き継ぎますので。
気の利いた探偵ですと、尾行前に追加でデータ調査を提案したりもします。住所と氏名以外に、依頼者にとって得になる情報‥‥皆さん何か分かりますか? ちょっと考えてみて下さい。
正解の一例は「浮気相手の女性が未婚か既婚か?」です。これは依頼者も心情的に絶対欲しい情報なので高い確率で食いつきます。依頼追加で探偵が儲かります。じゃあ既婚かどうかはどう調べるのか‥‥これも上に書いた●マークの手法を組み合わせたパズルですね。要は戸籍情報までたどれば、その相手の婚姻歴(過去に離婚したかどうかまで!)を詳しく知ることができるわけですよ。
携帯番号から氏名と住所は出ていますから、その2つから住民票データを取り寄せます。これで本籍地がわかりますので、続いて本籍地と氏名から戸籍データを取り寄せればいいわけです。依頼者は「携帯番号」「住民票」「戸籍」と3回分の調査費用を負担しなければいけませんが、うまくいけば浮気相手の家族構成や弱みまでがっちり握れるのです。
もっと必要だったら借金歴や預金残高まで暴いて、どのくらい慰謝料がブン取れそうか把握しておいてもいいですね。メールの内容から相手も会社員とわかっている場合、職歴調査で勤務先を知っておくのも有効。退社したところをすぐ尾行スタートしたい時に役立ちます。このへんは依頼者の予算とやる気(浮気相手への怒り)次第です。ここまで全部データ調査ですから、尾行や張り込みと違って相手に悟られることが一切ありません。浮気相手の女は自分の個人情報が筒抜けなのも知らずに、旦那と禁断の逢瀬をかさね続けるわけです。奥さん側の弁護士から「内容証明郵便」というキツ~い一発が届けられる日まで……