そして今回紹介するのが
蟹めんまさんの「バンギャルちゃんの日常」(エンターブレイン)です。
元々は「蟹めんまのバンギャル漫画」というブログからの書籍化で、単行本にするにあたってコラムや漫画など、いろいろな描きおろしも満載です。
表紙にはフロアにびっちりと詰まったバンギャルたち…。
■田舎でバンギャルとして生きるということ
この漫画は作者である蟹めんまさんと90年代ヴィジュアル系の出会いから始まり、家族やクラスメイトとの温度差、ホールライブやライブハウスでの思い出から、バンドやファンにまつわるアレコレを独自の視点で綴ったエッセイ漫画です。
ちなみに、表紙の中央に描かれているのが、中学時代の作者です。
ちなみに蟹めんまさんの出身は奈良県。
のどかな田舎の学生さんがヴィジュアル系という「非日常」に夢中になっていく経過は正直他人ごととは思えません。
私事で恐縮ですが、わたしも18歳まで山口県の田舎で暮らしていました。
ここで強調しておきたいのは、いくら90年代がヴィジュアル黄金期だったといっても、田舎にはヴィジュアル系ファンがほとんどいなかったのです!
GLAYやLUNA SEAは好きといっても「ヒットチャートの中の音楽」として聞いている人が殆どで、それはもちろん悪いことではないですし、そういう人達にまでヴィジュアル系が波及していたお陰で、現在の復活バンドブームも盛り上がってるわけですが!
ライブに行ったり専門誌を毎月穴が空くまで読んだり、インディーズのバンドまでチェックするような「バンギャル」は少なかったのです。
この漫画でいうと大阪の大都市圏まで電車を乗り継いでいかないと、
ヴィジュアル系専門ショップやヴィジュアル系バンドが頻繁に出演するライブハウスもなく、
(なので大規模な全国ツアーで田舎に来てくれるバンドはそれだけで好感度が上がります。)
「ど田舎でマイナーなヴィジュアル系を聞いている」という事実だけでなにか特別な気分になれたのです。
あくまで気分の問題なので現実にはとくに変化はないわけですが……。
また、ヴィジュアル系ファン以外の方でも、
「ラジオの電波が悪いのでラジオ本体を全身で抱えながら聞く」
「MステやカウントダウンTVで一瞬でも好きなバンドが流れると歓喜」など、
90年代以前に学生時代を過ごしたような人なら、誰しも身に覚えにあるようなことが満載の漫画です。