「うわ、なにこれ、ヤバくない!? 入っていこうよー」

ギャルたちの黄色い声が、あちこちから聞こえてくる。渋谷の街の象徴とも言える渋谷パルコ、その目の前に突如出現した、巨大なゴミ袋! 周りには、ゴミ袋の内部に入ろうとする人の列がズラリ。パルコの外壁に目をやると、<PARCO>の電飾のうち、<P>と<C>の文字が消えている……。一体、渋谷パルコでなにが起きているのだ!?

実はこれ、渋谷パルコ・パート1内のパルコミュージアムで10月14日(日)まで開催されている、アーティスト集団・Chim↑Pom(チンポム)の個展『Chim↑Pom展』の展示の一部。東日本大震災が起きた昨年には、渋谷駅にある岡本太郎の壁画『明日の神話』に福島第一原発の絵を付け足す作品をゲリラ的に発表し話題となるなど、社会に密接にコミットした作品を数多く発表している6人組だ。

そんなChim↑Pomを結成当初から評価していたのが、美術家・会田誠さん。切腹する女子高生を描いた絵画や、自らビン・ラディンに扮したビデオ作品など、多岐にわたる表現方法で独自の世界観を築いている、日本を代表する現代美術作家だ。彼もまた、11月17日(土)から森美術館にて大規模な個展『会田誠展:天才でごめんなさい』を控えている。また、その創作と人生に迫ったドキュメンタリー映画『駄作の中にだけ俺がいる』(渡辺正悟監督・Z-factory Inc.)が11月10日(土)から渋谷・ユーロスペース他、全国各地で公開されることも決定している。

そこで今回は、Chim↑Pomのメンバー岡田将孝さん・稲岡求さんと会田さんの3名で、『Chim↑Pom展』について、互いの表現について、さらにはいまの渋谷の街やパルコについて、さらには世代間の復讐についてまで、ざっくばらんに語ってもらった。

ちなみにこの日、会田さんは缶入りのウイスキー水割りをたしなみながら登場! ほろ酔い気分の会田さんに、まずは当日初めて『Chim↑Pom展』を見た感想から聞いてみた。

写真左から、岡田将孝さん、稲岡求さん、会田誠さん

パルコの姿勢を全ての商業施設、公的な機関は見習って欲しい

会田 「Chim↑Pomの展示はいろいろ見てきたけれど、正直言って、これまでである意味一番いいくらいに思いましたね。パルコっていう場所との響き合いというか、“水を得た魚”感があるよね。“PARCO”の看板のPとCが取れてるとか、でかいゴミ袋があるっていうのは事前に情報だけは知ってたけど、公園通りの坂から登ってくる導入部分のビジュアルやデザイン性もいいし。中の展示の着替え室かのような入り口から内部に入っていく感じとか、重厚な絵画を描くような人からしたら文句タラタラ言われそうな空間だけど、まさにChim↑Pom向きな“仮設性”がありますよね。カタイ美術館から呼ばれることもChim↑Pomのいいところだと思うけど、そういう時って居心地悪そうにしている印象を、客として感じることがある。でも今回はそういうのがない、風通しのいい感じで、いちばんハマってる感じがしたんだよね」

岡田 「今回は商業施設でもあるし、カタイ美術館とは客層がまったく違いますからね。場所が場所だけに、スケールを大きくしてパルコ目当てのお客さんだけじゃなく、渋谷を行きかう不特定多数の人々にもアピールしていくことも目的として考えましたね」

会田 「パルコって70年代に東京に革命を起こした施設で、学生運動とかヒッピー文化を背負ってる企業なのね。ここ40年くらいの東京のユースカルチャーの変遷を辿ってきた場所。そういう背景は知ってたの?」

岡田 「そこまでコアな流れがあったことは調べていませんが、そうした“パルコ文化”っていうのが確立されるくらいの独自の戦略があったっていうのは何となく刷り込まれていると思います。でも、どちらかというと現在の渋谷でできること、っていう発想ですね」

稲岡 「渋谷って街自体かなりそういう企業が戦略的に開発した場所ってイメージはあるし、昔のほうが色々面白い事を仕掛けていたとは聞くよね。実際の人間をマネキンとして展示したとか。いまはあんまりそういう事はやらなくなって、普通の商業店鋪になってるけど、昔はもっとイケイケだったって」

会田 「儲かってたからこそ、儲け度外視みたいなことができたっていう側面もあると思うけどね」

岡田 「つまりこのご時世にChim↑Pomみたいなモンの展覧会をやるってことは、パルコが儲けだしてるってことですよね!?」

稲岡 「実際の店舗にお客さんが来てくれなくなってるし、大事な時期だろうにあえてChin↑Pomをやる! って思ってくれるのが有難いよね。やぶれかぶれなのかも(笑)」

会田 「でも本当に面白いのはそういうことなんだよね。僕みたいな中年から見ると不思議な歴史のねじ曲がりを感じて、それが面白い」

岡田 「よくやらせてくれたなっていうのはありますね。やればできるじゃん!! って言うか、このパルコの姿勢を全ての商業施設、公的な機関は見習って欲しいものです。僕らChim↑Pomより面白いことできるポテンシャルはみんな持っているはずですから」

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