日本の税金は、基本的に“自らの申告”に基づいて手続きが行われています。
そのため、いろいろな税金が少なくなるような控除や非課税措置があっても、制度を知らずに申告しなければ、そのメリットを受けることはできません。
そこで今回は、数ある税制の中から、近年変わったことの身近な部分として「住宅取得」に関するものを取り上げてみます。
税金の制度は毎年のように変わる!
それぞれ目的があっていろいろな政策がありますが、税制は、それを実現したり後押ししたりすることに密接に関わっています。
そのため、毎年「◯◯年度税制改正」として発表があり、大なり小なり変更が出てくるのです。
その時々の状況にあわせて変更することもありますし、限られた期間だけのものも多いので、こうだと思っていたけれど、今は違っている…といったことも出てくるでしょう。
例えば、消費税が10%に上がってから1年半が経ちますが、その時の景気対策で行ったことについては、もうやめるはずだったけど、コロナ禍の影響もあるから…と、延長しているものもあります。
上手に利用するには?「住宅取得」に関する税制
住宅は、景気対策の大きな要素となることから、取得を後押ししようと様々な税制上の優遇が設けられています。
人生の三大資金の1つと言われるように、住宅取得には多額のお金が必要なので、そこで使える制度についてはぜひ知っておきたいところです。
制度ごとに、取得時期や住宅の条件等が定められており、またコロナ禍で延長したものもあり複雑になっているので、主だったことについて簡単に整理してみましょう。
住宅ローン控除について
住宅を取得をするときは住宅ローンを組む人が多いと思いますが、返済初期は利子の部分が大きいため、その負担を減らすよう、ローンの残債に応じた金額を税金から控除する制度があります。
居住年や住宅の種類等により、控除対象となる年末の借入金残高の限度額は異なってきますが、税額控除する額は、年末借入残高の1%を10年というのが長く続いていました。
そんな中、消費税アップの際の景気対策として、消費税率10%で取得した場合は、「特別特定取得」として、控除期間を次のように13年に延ばすという措置が取られています。
〔特別特定取得の場合の控除額〕
1~10年目:年末借入金残高の1%
11~13年目:次の(イ)(ロ)のうちのいずれか少ない金額
(イ)住宅借入金等の年末残高の1%
(ロ)消費税抜きの住宅取得等の対価×2%÷3
この13年の控除は、居住開始が令和2年12月末まででしたが、令和3年度の税制改正では「特別特例取得」として、居住開始が令和4年12月までのもので13年の住宅ローン控除を受けられるものが定められたのです。
住宅ローン控除は税額控除のため、支払う税金額が大きく減りますが、今だったらその控除を13年間受けられるのです。
なお、この控除を受けるにはいろいろな要件がありますが、それぞれの対象期間や限度額、住宅の要件などについては別途ご確認ください。
直系尊属からの住宅取得資金に係る贈与税について
住宅取得の際に、親族から援助を受ける人もいるでしょう。直系尊属(実父母や祖父母)からの住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定の限度額までは贈与税を非課税にする措置が取られています。
限度額について年々見直されていますが、今年(令和3年)の4月にその限度額が引き下げられる予定でしたが、令和12年末までそれまでの額が継続することになりました。
限度額は引き下げる方向へと見直しが続いているので、もし住宅取得資金の贈与を受けることを考えているなら、年内の方が非課税で贈与を受けられる金額は多くなるでしょう。