振り付けは、向こうのオーダーにどれだけ自分が応えられるかが勝負


――そのショーパブ時代にスカウトを受け、自身も仲間とともに店を立ち上げ。40分ほどのショーを作り発表しながら、徐々にメディアや舞台などの仕事が入るようになっていく。そんな中、26歳のときにダンス留学のため渡米。そのまま渡ったブラジルでストリートダンスとしても人気を誇る武術『カポエラ』を習得し、帰国と同時にカポエラの普及『CAPOEIRA JAPON』を設立する。そしてそのころから、先述したエンタメ界で振り付け師としての活動を始めることになる。

JUNさんの仕事においてもうひとつの大きな軸が、舞台作品での振り付けだ。中でも三宅裕司が旗揚げした劇団『劇団スーパー・エキセントリック・シアター』(以下『SET』)との仕事の中では、学ぶものがとても多かったと語る。

 

『Legend Tokyo』での、カポエラを用いたワンシーン。  拡大画像表示

「そもそもは、ある公演の中でカポエラを劇中に入れたいという話になったらしくて。そこで俺が紹介されて、舞台でカポエラの振り付けをしたのが出会いです。振り付けの仕事って、『歌舞伎っぽいの』とか『クラシックバレエみたいなやつ』みたいな感じの発注が多くて、それに応えられなければいけないんですが、その対応力は『SET』っていう劇団との仕事でずいぶん鍛えられましたね。

『SET』の場合は「こういうシチュエーションで、こんなダンスがしたい」っていう発注なので、向こうのオーダーにどれだけ自分が応えられるかっていうのが勝負で。向こうが求めてるものに対してなにかを提示して、それをよりイメージに近づくようにすりあわせていく。もちろんホンモノの歌舞伎はできないですけど、それっぽい雰囲気の振り付けはできるようになる。そういう力を鍛えられたなって」


――相手がなにを求めているのかを正確に把握し、期待以上の振り付けを提示していく。プロフェッショナルと呼ぶにふさわしいJUNさんの仕事は、『SET』の作品に欠かせない存在となっていく。『SET』の劇団員の大竹浩一さんは、JUNさんが『SET』に与えた影響について、こう語る。


「それまで『SET』のダンスシーンは、ジャズダンスがメインだったんですね。でも三宅さんも『夜もヒッパレ』への出演などを通してヒップホップにも興味を持つようになって、本公演で劇中にヒップホップを取り入れることになったんです。そこからヒップホップを踊るシーンだけではなく、劇中に出てくるダンスシーンをすべてJUNさんにお願いするかたちになっていって。いわゆるダンサーさんに振り付けをお願いすると、ダンスばかりがメインになってしまうこともあるんですけど、JUNさんは芝居でここを見せたいとか、流れ上ここが引き立ってなきゃいけないとか、そういう部分をうまく加減してくれる。そういう“芝居とダンスの狭間の見せ方”にはいつも刺激をもらっています」