韓国庶民が愛して止まない食べ物を紹介する連載の3回目は、韓国人の食卓に欠かせない副菜キムチと主菜との相性について紹介していきたい。
この食べ物にはこのキムチ
日本の人はキムチというと白菜キムチを連想する人が多いと思うが、韓国のキムチは基本の野菜も多彩で、発酵の過程で食べるタイミングもさまざまだ。
筆者個人の好みもまじえながら、いくつか例を挙げてみよう。
ラーメンには酸っぱいキムチ
韓国でラーメンといえば今もインスタントラーメンを指すことが多い。家で作って食べるものだけではなく、大衆食堂で出てくるラーメンもたいていインスタントの袋麺である。
じつは韓国人は日本人と比べると脂に敏感だ。日本の人にとってはそうでもないかもしれないが、インスタントラーメンのスープは韓国人にとっては少々脂っこく感じるものなのだ。
だから、麺をすすったり、スープを飲んだりする合間のアクセントとしてキムチがほしくなる。それも発酵が進んで酸味が出たキムチが望ましい。これがアクセントになり、口中をさっぱりさせてくれるのだ。
「ラーメンにキムチ」は健康のためというより舌が求めるものだ。日本で本格的なラーメンを食べるとき、特にそう感じる。日本のラーメン専門店のスープは韓国人にはかなり脂っこい。
日本で背脂系やとんこつ系のラーメンを食べたとき、キムチが添えられないのは韓国人には耐えがたいことだ。たとえ有料でもメニューにあればいいのだが、キムチどころか漬物すらない店も珍しくないから困ってしまう。
キムチで口中がさっぱりするという感覚は、日本の韓国料理ビギナーには理解しがたい感覚かもしれないが、食べ慣れれば舌で理解してもらえるはずだ。
韓国の映画やドラマには、登場人物が辛いものを食べながら、「シウォナダ!(爽快だ!)」と言う場面があったりする。
白系の食べものには、コッチョリやカクトゥギ
ソルロンタン(牛の骨や肉を煮込んだスープ)やカルククス(韓国式煮込みうどん)やスジェビ(すいとん)、サムゲタンなどはスープに香辛料を使っていないので、パッと見が白っぽい。これらを仮に白系と呼ぼう。
スープの味も淡白なので、辛いものが苦手な日本の旅行者で白系のものばかり食べるという人も少なくない。
淡白な料理には、しょっぱさが立っている浅漬かりのキムチや、白菜を辛い薬味で軽く和えただけのコッチョリが合う。
また、白系にはカクトゥギ(大根の角切りキムチ)が欠かせないという韓国人が多い。筆者もその一人だ。白系の食べ物は、ソルロンタンの牛肉もサムゲタンの鶏肉もやわらかく煮こまれているので、カクトゥギの歯ごたえが食感のアクセントになって小気味よいのだ。
ソウルの明洞には、澄んだスープのコムタン(牛肉煮込み汁)が人気で、ミシュランガイドでも紹介された『河東館』という老舗がある。
この店ではソルロンタン専門店同様、カクトゥギが添えられるのだが、カクトゥギの小皿の底にたまった汁(カクトゥギ・クッムル)をスープに加えて食べる人が多い。
そのため、この店ではあらかじめやかんに汁を入れて客が好きなだけ注げるようにしている。
淡白な食べ物のアクセントとしてキムチをほしがる人の多い我が国らしい話である。