今年も残すところ3ヶ月余り。最後の韓国訪問から2年経ってしまったという人も多いだろう。どんなに遅くても今年の夏にはみなさんと再会できると思っていたのだが……。
みなさんが韓国を恋しがるように、私も日本が恋しい。今夏は生ビールやホッピー、もうもうと煙を上げて焼かれる焼きとんを思い出し、悶々とする日が続いた。
ソウルの注目エリア、鍾路3街(チョンノサムガ)ツアーの6回目は、前回に続いて鍾路大通りの南側の大衆飲食エリアを歩いてみよう。
この辺りは観光客とはあまり縁のないところなので、コロナ禍の影響は比較的少なく、今も庶民の息吹が感じられる。
行きつけの飲み屋
今回は世運商街のビルの北端を背に左手に見える路地(鍾路大通りの一本南側)に入り、西方向に歩いてみよう。
今回の目当てはこのエリアの中心部にある『ハンアリチプ』。
昼はカルククス(韓式ウドン)やスジェビ(すいとん)、トッマンドゥクッ(餅と餃子入りスープ)などの食事ができ、夜はジョン(さまざまな具材に衣をつけて揚げ焼きしたもの)やパジョン(韓式お好み焼き)をつまみに一杯やれる店だ。
店の女将が韓国ズッキーニや豆腐、ひき肉、白身魚などを小麦粉と生タマゴを水で溶いたものにくぐらせて、脂をひいた鉄板の上で揚げ焼きするのを見ていると、韓国人なら生マッコリがほしくなる。
多少の脂っこさのあるジョンは、自然発酵による酸味と炭酸の清涼感がある生マッコリと実によく合うのだ。
韓国では鉄板でジョンを焼く音が雨音を連想させることから、雨の日にはジョンでマッコリを飲む人が多い。
雨の日は市場に買物に行くのがおっくうになるので、家にある食材で簡単に作れるジョンを選ぶということもあるだろう。
『ハンアリチプ』も例外なく雨の日は混雑する。この韓国独特の飲食情緒をコロナ明けにぜひ確かめに来てほしい。
ジョンの店は作り置きを店先に盛り付けて客寄せにしていることが多い。注文が入ると、それを焼き直して出すわけだ。
しかし、この店では注文を受けてからひとつひとつに衣をつけて、丁寧に焼いてくれる。周辺で働いている人たちの常連が多い店ならではの人情味といってよいだろう。
鍾路3街とは?
ソウル旧市街(漢江の北側)の観光地・仁寺洞(インサドン)の東隣りに位置する庶民の歓楽街。おじいちゃんの憩いの場、巨大屋台街、スタイリッシュなカフェレストラン街、新宿2丁目的な路地、ドヤ街などが共存するカオスな街だ。
ここ数年、日本のガイドブックに登場するようになった古民家を改装したカフェレストラン街・益善洞(イクソンドン)は鍾路3街の中心部にある。
法定洞としては楽園洞、敦義洞、益善洞、鳳翼洞、墓洞、臥龍洞、雲泥洞、慶雲洞、観水洞が鍾路3街に含まれる。
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