■株価は景気を先取りして動く、つまり実態はこれから
株価というのは現在の会社の業績だけでなく、将来の会社の業績も先取りして決定されます。つまり、来年や再来年の景気や業績の予想も勘案して売り買いがされているのです。将来の伸びしろがあれば、現在の企業価値より高い株価でも値上がりしますし、現在は好業績でも来年の受注見込みゼロの会社なら株価は暴落します。
つまり、株価が上がっている昨今の動向も、「今が景気回復した」だけで株価が上がったわけではありません。「これから景気回復するに違いない」という期待も含めた株価上昇なのです。私たちは日常生活において、モノの値段に今以外の要素が加味されることはありません。ある有名ブランドでチョコレートを買うとき、「来年もいい新作チョコを作ってくれるだろうから、高い値段で買ってもいい」とは考えないはずです。しかし、株式においては将来の価値変化もまた価格の一部なのです。
ということは、自分自身の財布がプラスになるような影響が出てくるのはまだ先、ということになります。早く業績が回復した会社では今年の春から給料が上がるかもしれませんが、来年の春以降というところが多いと思います。それももちろん、景気がしっかり回復して業績が戻ればの話です。ボーナスについては業績と直結して増減する会社が増えているので、うまくいけば今年の夏から増えることになるかもしれません。
■給料が上がっても消費税増で消えるかも?
ところで、景気が回復して給料が上がったとしても、実はまだ個人にとって安心できる状態ではありません。というのは消費税増が控えているからです。2014年4月に消費税を8%、最終的には10%に引き上げる前提として、景気回復してからである、という認識があります。景気回復もしない中で増税はおかしいというわけですが、逆にいえば「景気回復すれば消費税増に踏み切る」という意味でもあります。
理屈としていえば、5%給料が増えても消費税が5%増えれば生活の実感はトントンです。景気回復の副次要素として物価が上がってしまえば実質的には目減りかもしれません。現在は円安による景気回復が進んでいますが食料品や各種原材料などの輸入品は価格上昇しており、ガソリンや電気代の値上げも避けられないからです。
結論としていえば、目の前の株価が上がったくらいで個人は喜んでいてはいけません。むしろ景気に関係なく自分の年収は自分で上げる、くらいの気持ちをもって、自分のキャリアアップを意識したほうがいいと思います。景気回復すれば全員が1%の賃上げになるかもしれませんが、主査とか係長といった役職のステップアップが1つ実現すれば自分だけ5%年収アップということもあり、そのほうがお得度合いは大きいわけです。特に若い世代ではそうした昇格ペースに乗り遅れないことも大事です。
自分の能力は変わらないけど景気回復に伴って上がった年収は、景気が後退すれば下がるかもしれません。アベノミクスでなんとなく日本人がみんな豊かになれる、と思っているなら、それはあり得ない、と思いますよ。