『ミラベルと魔法だらけの家』は「特別なひと」も救い上げる

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さて、長々書きましたがまだ続きます。

これまで様々な作品で、特別じゃない人、持たざる者のケアや救済の物語はたくさんありました。

漫画やアニメにでは、特別じゃないと思ってたら実は特別になりました、みたいな話は珍しくありません。

ですが、「最初から特別なひと」はどうでしょうか。

ミラベルの長姉であるイサベラは、“花のギフト”が家から与えられ、彼女の周りにはいつも可憐な花が咲き誇る、誰もが羨むような美しい女性です。

次姉のルイーサは“力(パワー)のギフト”を与えられ、ロバ5頭を担ぎ上げ、レンガで出来た橋を軽々持ち上げたりする力を持ち、街のみんなが力強く働き者の彼女を頼りにしています。

しかし、そんな彼女たちが「本当は何を考えているか」なんて本心を、映画の中の登場人物は誰も気にしていませんでした。

特別なひとの気持ち

完璧な美しさを持つ女性は、誰からも愛される人生を必ず生きなければならないのでしょうか。

恵まれた力を持つ心優しい人は、人に奉仕をして当たり前なのでしょうか。

答えはいいえ、です。

完璧な美しさはもちろん羨ましいものですが、その人の生き方はその人が決めるものです。

人に奉仕することは素晴らしいことですが、それは絶対当たり前ではありません。

ミラベルには特別なギフトは与えられず、アルマおばあちゃんから厳しい態度を取られますが、ミラベルのふたりの姉は、特別なギフトを通してでしか、おばあちゃんが接することはありません。

家族に愛されるためには資格が必要? 役目を果たせなければ愛される価値はない?

周りから特別だと言われている人に、心は必要ない?

この映画には、特別じゃないことで辛さを抱えるミラベルもいれば、家族のために役目を全うしようとするイサベラ、家族のための役目に押しつぶされそうになるルイーサも登場します。

マドリガル家は魔法の奇跡に溢れた特別な家ですが、この家で起こる問題は、奇跡から程遠い現実世界の私たちに置き換えることはとても容易です。

『ミラベルと魔法だらけの家』は、めくるめく大冒険やうっとりするロマンスはほとんど描かれませんが、誰かの世界を変えることが出来る作品だと思います。

誰もが「家族のため」に

この映画には明確なヴィランは存在しません。

登場人物の誰もが「家族のため」に行動しています。

わかりやすい悪役がいなくても、誰かのためを思った行動でも、役割に囚われたり何かに固執した結果、家族は簡単に崩壊します。

現実世界で同じようなことが起きた時、映画のように魔法は起きないかもしれません。

それでも、これから家族を作る人たちがこの映画を観たら、ほんの少し未来は変わるかもしれません。

そういう意味でも、『ミラベルと魔法だらけの家』は誰かの世界を、人生を変える映画だと、私は思います。

「家族」というものは、人によって捉え方が違います。そして、愛し方や守り方も、人の数だけあるのだと私は思います。

この素晴らしい映画を通して、私たちの誰もが、「自分自身が既に持っている特別な“なにか”」に気づくことが出来ますように。

『ミラベルと魔法だらけの家』は、2021年11月26日(金)公開です! 

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