実行フェイズ
男女の恋は出会いから‥‥ということで出会いの場を作ります。ここが上手くいくかどうかで工作自体の成否が7割方決まってしまう大事なところです。
プロが仕掛ける出会いの方法といっても、案外シンプルなものです。通勤電車の同じ車両に毎日乗って徐々に親しくなる、目の前でわざと転んで手荷物をぶちまけるなど結構なんでもアリです。変に凝るよりもベタベタな、恋愛ドラマやラブコメマンガのようなシチュエーションを用意した方が成功率は高いような気がします。
ともかく、こうして無事ファーストコンタクトに成功したら「お礼に食事でもごちそうさせて下さい!」などと持ちかけ、メアドを交換したりしながらデートを繰り返していきます。適度に仲が深まったところで、いよいよラブホテルなんかに行ったりします。当然、きっちり現地には撮影班がスタンバイ済み。決定的な証拠写真やビデオを撮影します。
これで後は仕上げフェイズを残すだけです。
ちなみに工作員は、出会いに成功すれば○円、メールのやりとり1通ごとに○円、ホテルまで行ければ○円のように、成功報酬を基本給に上乗せして支払うことが多いです。なにかと危険な仕事ですから報酬はけっこう高かったです。ただ、中にはプレッシャーや良心の呵責に耐えかねて逃亡する子もいました。彼女らをフォローする探偵社側もなにかと大変なのです‥‥。
仕上げフェイズ
ターゲットの太郎と工作員の決定的な写真が撮れたら、それを使って別れさせの仕上げに入ります。証拠をいつ、誰に突きつけるかは、状況だとか依頼者の意向とかで変わってきます。
ここで新たに別の工作員を投入しましょう。先の工作員とは性別が逆で、いかにもチンピラ風なガラの悪い男性を用意します。彼は女性工作員の交際相手という設定です。
オーソドックスなのは太郎と花子がデートしている場に、工作員の男が乗りこんでいくパターンです。「オレの彼女に手を出したのは貴様か!」と写真をヒラつかせながら一方的に凄んでいきます。花子は「私以外にもこんな若い子と‥‥奥さんと別れて結婚したいなんてウソだったのね」と幻滅して、2人の仲は終わります。
もっと大ダメージを依頼者が希望するなら、太郎の奥さんに証拠写真を突きつけるパターンも有効です。太郎が出社中、家でワイドショーを見ている奥さんに男性工作員が訪ねていき、同じように写真を見せながらまくし立てます。寝耳に水の奥さんとしては「うちの夫が浮気!?」「この子だれ?」「このヤクザみたいな人怖い!」と強烈なストレスを受けます。
数時間後、そのストレスから転嫁した怒りは120パーセントの濃度で太郎に叩き込まれるでしょう。もはや花子との不倫どころではなくなり、下手すると太郎の家庭まで崩壊させることができます。いい気分で「俺って最近モテ期?」と浮かれていた太郎は、不倫相手の花子とも妻とも疎遠になり、もちろん女性工作員とも連絡が途絶え、完全に孤立した人生を送ることになります。
いろいろ省略した部分も多いですが、これが別れさせ工作の大まかな流れになります。