別れさせ工作にまつわるトラブル

うまくいけば問題ないですが、ただでさえトラブルの多い探偵業界で最高に詐欺被害のリスクが高いのも、別れさせを含めた「特殊工作」の依頼です。

これは探偵という職業カテゴリの構造的な問題も絡んできます。想像してみてください。たとえば皆さんが家電店でエアコンを購入したとして、その品質やサービスが気に入らなければ家族・友人に「あの店は最低だった」と文句を言えるでしょう。

では、探偵に依頼して騙された時も同じように周囲へ文句を言えるでしょうか? たぶん無理だと思います。今の日本では探偵に調査を依頼したということ自体、かなり大きなマイナスイメージが伴います。ましてや「別れさせ工作を依頼して詐欺に遭った」など、普通は誰にも話せません。被害者のほとんどは泣き寝入りと言ってもいいでしょう。

だからこそ悪質な業者にとって、特殊工作というのは非常に美味しい仕事です。なにせ相手を騙しても勝手に泣き寝入りしてくれる、しかも1件あたり報酬額が百万・二百万円なんてザラですから、1人でもカモを見つければ大金をせしめられます。報酬だけ受け取っておいて何もしなくても、依頼者に詰め寄られたらこう言えばいいのです。「ちゃんとやったけど結果が出なかったんですよ。気に入らないなら訴えてみます?」と。私のいた所は社内でルールを整えて真剣にやっていました(今は工作全般から撤退済み)が、中には危険な業者があることも知っておいてください。依頼者側も相当なリスクを覚悟しなければいけません。まさに工作の依頼は「人を呪わば穴二つ」なのです。

どこで間違えたのか研究者の卵から探偵へクラスチェンジ後、足を洗った現在はライター稼業。いまだに尾行を気にして振り返る癖が抜けません。記事の守備範囲はネット、現実世界に関わらずちょっぴりアングラ系を好みます。