準備フェイズ

まず依頼者から詳しく話を聞きます。どんな相手を別れさせたいのか?希望する期間や予算は?ターゲットの個人情報は分かっている?などです。あまりに内容が自分勝手で不合理だったり、危険だったりするとお断りするケースもあります。

私のいた所では「不倫カップルの別れさせ」は受けるけど「夫婦の別れさせはNG」という内部ルールがありました。法的・倫理的にとてもまずいからです。なお、2002年から業界団体(日本調査業協会)が自主規制を発表し、ここに加盟している探偵社は特殊工作自体を受けられなくなりました。さらに2007年に「探偵業の業務の適正化に関する法律」が施行されて、ますます特殊工作から撤退する業者が増えています。

話が逸れましたね。今回はダンナが依頼者で、妻と不倫相手の別れさせを頼んできたとしましょう。

【サンプル依頼の人間関係】
依頼者: 38歳男性、会社経営
対象者1: 花子(仮名) 35歳、専業主婦、依頼者の妻
対象者2: 太郎(仮名) 35歳、会社員、既婚者、花子の不倫相手

仕事で忙しい依頼者を横目にダブル不倫しているという、実によくある(?)パターンですね。依頼者は子供もいるため離婚を考えておらず、二度と2人が付き合わないよう徹底的に別れさせてほしい‥‥という要望です。

こんな場合、花子と太郎の浮気現場を撮影し、本人に問い詰めてもあまり効果は見込めません。いったん別れたふりして、数ヶ月でまた不倫再開するのが目に見えているからです。だからこそ工作をするわけですね。

さて、依頼を受けるとなればターゲットの個人情報が必要です。まったく未知の相手なら、普通の探偵がやるように素行調査から入って、相手を家まで尾行するなりして名前や勤務先の情報を得ます。今回は太郎が依頼者の大学時代の後輩という設定にして、個人情報があらかじめ分かっているとしましょう。

太郎は既婚者で20代の妻がいて、まだ子供はいない。中堅企業に勤め、出社と帰宅の時間帯はだいたい毎日同じ。こんな感じです。

次に、ターゲットに合わせた工作員を調達します。工作員には「自社で常時抱えている」「必要に応じて外部から雇う」パターンがありますが、私の所は工作専門でもないので後者でした。

女性工作員の場合、若くてかわいいほうが当然ベターです。あとはターゲットが好きな女優に似ているとか、共通の趣味があるとか、できるだけ成功率を高めるように選んでいきます。工作員のプロフィールはもちろん架空のもの。ターゲットとの連絡用に、身元が判明しにくい携帯電話も持たせておきます。

次は本番、実行フェイズに移ります。