「この作品と出会って、恋愛観も変化した」
――「時間は有限である」ということを教えてくれた今作だったと思うのですが、「この作品と出会って、恋愛観も変化した」というコメントを出されてましたね。
「人生は有限である」ということを、この作品を通して改めて感じたんです。
先延ばしにするより、いまの密度を高めることの方が大切だと思ったし、抑止した方がいいことと抑止しなくてもいいことがある中で、これはひとりの人間としての意見だけど、恋愛に関してはもっと奔放に自分の気持ちを伝えた方がいいような気がして。
例えばだけど、「好き」ってことだけではなく、「いまはちょっと会えない」とか「いまは会える」とか、そういう自分の気持ちをちゃんと相手に伝えるべきなんだなっていうことを、晴人と美咲を見て思いましたね。
――相手の理解や同意を、ちゃんと得た方がいいということですね。
そうです、そうです。それに、20代の恋愛は20代にしかできないので、そのパワフルな恋愛をいまはたくさんエンジョイした方がいいなって思っちゃいました(笑)。
――それは自分の気持ちを解放しつつ、相手にも向かっていくような恋愛ができるといいなっていうこと?
そうですね。引っ張られる恋愛よりも、お互いを高め合って、刺激し合う恋愛の方が僕は好きなので。晴人と美咲はそれができていたんですね。
――確かにそうですね。
そう!「美容院の仕事で今日はこういうことがあったんだ」「いや、俺もスタジオでこんな風に言われてさ」みたいな会話をするのがすごくいい。
ああいうお互いを高め合える恋愛は本当に美しいし、この世代にしかできないって僕は思っているんですよ。30代は30代でまたちょっと大人の、ワイン多めの恋愛になるかもしれないですから(笑)。
――今回の台本は、中島さんが関わらない、美咲だけのシーンは監督の提案で空白になっていたそうですが、それはお芝居にどう影響しましたか?
とてもやりやすかったです。さっき話したように原作を知っていて、読んではいたけれど、今回のラブストーリーに関しては鮮度を保っていたかったんです。監督にも「小説の記憶を消してください」って言われましたね。
でも、読んでから時間が経っていたので、物語の軸は理解しつつも、ディテールは完全に消すことに成功していて。
その上での空白のある台本だったから、自分の気持ちにすごく集中できました。
――美咲とデートを重ねる前半のシーンも、彼女が患った難病ことを考えずに自分の気持ちを純粋にぶつけることができたわけですね。
そうです。美咲が本当に大変なときに普通にしているのがギャップの出るいちばんのポイントだと思ったんです。
でも、それって意識しちゃうと、作っている感じになっちゃうので、知らない方がいい。
監督にも「役者は忘れることが仕事です」って言われたんですけど、忘れるも何ももともと台本に書いてない。
だから、すごくやりやすかったし、自分はある意味能天気なテンションで日々を過ごすことができたなと思っています。
――空白のある台本にやり難さを感じることはなかったですか?
まったくないです。自分は道筋みたいなものを細かく書かれちゃうとやり難いタイプなので、今回のやり方はよかったです。感謝してますね。
完成した作品を観て思ったこと
――完成した作品を観て、それまで知らなかった、美咲がひとりで悲しんだり、苦しんでいたり、どんどん老いていく姿を目にしたときはどう思いました?
辛かったですね。実は僕、クランクアップしたその日に、美咲のシーンもすべて書いてある台本を読んだんですよ。
こんな台本だったんだ!?って、それもいままでにない体験だったんですけど、それを最初の試写で映像で観たときはこれは辛いな、彼女はこんな辛い時間を過ごしていたんだなと思って、その悲しみが後からドスっと来ました。
――演じられていた中島さんですら、そこまで心を揺さぶられたわけですね。
はい。あと、シンプルに“要潤さんが出ていたんだ!”って思いました。
誰が出演しているのかも知らなかったし、現場で関わることがなかったので、試写で要潤さんに会ったときも、あれ(何でいるの)?って感じで(笑)。
要さんも「そうなんだよ健人、俺も出てたんだよ」って笑っていたけど、過去に共演したことがあったので、嬉しかったですね。
――劇中に「悲しい恋愛は芸術の糧になる」というセリフがありましたが、中島さんはどう思われますか?
その通りだと思います。めちゃくちゃそう思います。
――恋愛をしているときの輝きとかウキウキした感じは仕事に影響します?
恋愛に限らず20代の前半は僕もけっこう影響されていたかな~、いいときも悪いときも。
――現在は?
いまはいろいろと俯瞰できるようになったので、猪突猛進でも盲目でもなく、ちゃんと幅広い目で、幅広い期間で物事を捉えられるようになったし、そういった意味では振り回されないようにはなったのかなと思います。
恋愛とどう付き合っていくのが仕事にとっていいのか?
――これから春になって、就職する人も多いです。悲しい恋愛をしても仕事には行かなければいけなくなると思うんですけど、そういう人たちに人生の先輩から、恋愛とどう付き合っていくのが仕事にとっていいのかアドバイスをいただけますか?
困ったときは動け! ですね。困ったり悩んだり、悲しんだり、そういう感情になったときに家にひとりでいると、一生その負のスパイラルから抜け出せないんですよ。
でも、自分に“動く”というきっかけを与えると、それを徐々に忘れさせてくれるんですよね。
だから、めちゃくちゃ失恋した次の日は、本屋やカフェに行った方がいいし、自分で“悲しいときほど動く”ということを意識した方がいいと思います。
「悲しい恋愛が芸術の糧になる」
――「悲しい恋愛が芸術の糧になる」ということを、身をもって感じたこともあります?
僕、自分が書いたソロ曲は全部ラブソングなんですよ。ラブソングの歌詞しか書けないんですよね(笑)。
――その歌詞はご自身の恋愛が糧になって生まれたものなんですか?
恋愛に限らず、20代のいろいろな経験の中から生まれた歌詞もあるし、大学時代に書いたソロ曲「カレカノ!!」では「恋の単位を上げよう!」という歌詞を書いたんですけど、あれは大学でめちゃくちゃ単位が欲しいときに思いついたものなんですよね(笑)。
本当に単位が欲しかったし、ソロ曲も作らなければいけない制作期間だったんだけど、なかなか歌詞が書けなくて。
そんな単位が取れそうにない、ヤバいっていうときに……大学の授業の3限目だったんですけど、“単位”というワードがきっかけで“恋愛の神様”の歌を書いてみようって思ったんです。
あれは大学に通っていなかったら、閃かなかったでしょうね。
――なるほど、なるほど(笑)。
恋愛の神様だったら、恋の単位をくれそうだなと思って(笑)。そういう想いを「カレカノ!!」の歌詞には投影しました。
――ちなみに、恋愛の歌詞しか書けない、と言うか、書かないのはどうしてですか?
そういう性格だからでしょうね(笑)。う~ん、分からない。「青春アミーゴ」みたいな友情ソングは書いたことがないな。
「青春アミーゴ」か「抱いてセニョリータ」だったら、俺はやっぱり「抱いてセニョリータ」みたいな歌詞を書くもんな(笑)。
――2年後には30代に突入ですが、30代もその方向性は変わらない?
そうですね。それこそ、ミスチル(Mr.Children)さんが書き下ろしてくれた今回の主題歌「永遠」が本当に名曲なんですよ。
ミスチルさんのいままでの曲も僕は聴いているけれど、やっぱりラブソングが多いし、桜井(和寿)さんが書くラブソングをすごく尊敬しているので、僕も今度はもう少し自分の等身大の日常的な恋愛の歌詞を書けたらいいなって。
「永遠」を聴いて特にそう思いました。