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1973年結成のアメリカの弦楽四重奏団クロノス・クァルテットが、この秋、19年ぶり11回目の来日を果たす。オンライン会見に芸術監督のデイヴィッド・ハリントン(ヴァイオリン)が出席した。
現代音楽が彼らの領域。1,000曲を超える委嘱作品も生み、文字どおり弦楽四重奏の新たな地平を拓き続けてきた。今回は彼らの代表的名曲も披露して、あらためてクロノスの軌跡を示してくれるのがうれしい。ジョージ・クラムの《ブラック・エンジェルズ》(1973)、スティーヴ・ライヒの《ディファレント・トレインズ》(1988)と《トリプル・クァルテット》(1999)。すでに20世紀の弦楽四重奏の重要なレガシーとなっているが、いまなお先鋭さを失うことはない。これぞクロノスという刺激を味わい尽くせるはずだ。
「《ブラック・エンジェルズ》は私たちの活動が始まるきっかけになった作品です。ライヒの音楽は私たちの支柱のひとつ。彼はアメリカ社会の難しい課題を直視しつつ、音楽の原点に戻ることを忘れません」(ハリントン=以下同)
そしてもちろん、「いま」の視点がないはずがない。
クロノスが現在最も注力しているプロジェクトが、50 for the Future(未来のための50曲)だ。若い世代のための新たなレパートリーの創出。男女25人ずつ50人の作曲家に新作を委嘱した。スコアを無料公開し、世界各地で若いカルテットへの指導も行なっている。今回は50人中唯一の日本人・望月京(みさと)の《ボイズ》など10作品が演奏され、東京公演には日本の若手タレイア・クァルテットも出演する。
「50人の作曲家が、こんなにも多種多様で素晴らしい音楽を作り出す。私たちみんなが音楽の一員であることを再認識させてくれるプロジェクトです」
また、テリー・ライリーの《サン・リングズ》(2002)日本初演も注目。なんとNASAの委嘱により、宇宙探査船ボイジャーが記録した宇宙の音にインスパイアされた作品。日本の合唱団との共演というのも見逃せない。
「初めて音を聴いた時、ここまでできるのかと、一瞬戸惑いました。人間の持つ可能性の大きさを思います。この作品を日本で演奏することは、私たちの活動のハイライトのひとつです」
クロノス・クァルテット来日公演は、9月24日(土)京都、28日(水)東京、30日(金)さいたま、10月1日(土)横浜、2日(日)盛岡(全公演とも別プログラム)。
(宮本明)