――?

リハをしているステージ上からSNH48メンバーが見えて、遠くからになっちゃったんですけど、手を振ったんです。そうしたらたったそれだけのことなのに、彼女たちの姿が目に入った瞬間から、どうしてだか分かんないんですけど、心の揺れがハンパなくなっちゃって。あの一日の、気持ちの葛藤が始まりました。

――それが、激動の一夜の予兆だった?

今思えば、そうだと思います。リハから総選挙本番までの間、彼女たちが近くにいることは分かっていたし、AKB48のメンバーたちも「あそこにいるのSNH48の子たちだよね、カワイイ!」って言ってきてくれて「そうでしょ、カワイイでしょ?」って答えたりもしていたんですけど。

でも私、彼女たちを見られなかったんですよ、SNH48への熱い想いが一瞬でも覚めてしまった。そのことが申し訳なさ過ぎて。直接、目も合わせられなければ話すこともできなかった。本番前、時間はいっぱいあったんですよ。まりやんぬ(※SNH48留学生・鈴木まりやちゃん)もおしゃべりしに行ってたし。

でも私はこれまで経験したことがないくらい、何て言うか張りつめた感情が襲ってきて、楽屋にずっとこもっていました。メイクもすっごいギリギリになるまでできなくって。カチコチカチコチって、秒針の音が聞こえるんじゃないかっていうくらいドキドキして。

総選挙の前に知り合いの方からいただいた、お伊勢さまの内宮さまと外宮さまのお守りがあって、前日のリハーサルの時からポケットに入れていたんですけど、それを楽屋の中でも震えそうになりながらずっと握りしめてて。もう、どうすればいいのかほんと分かんなくて。

家族や心友のふたり、秋元才加と大島優子にメールを打って落ち着こうとするのが精一杯で、でも常に「ヤバイ」「泣きそう」「胸が苦しい」とかばっかり書いてました。心友も心配して「落ち着け、まずは落ち着け」「大丈夫だ、もう結果は出てるんだから」って、忙しい取材の合間を縫って返事をくれて、それがありがたくって。

でも本番直前になっても、ステージ裏で会った時に「佐江、顔が硬過ぎる」って言われたくらい、あり得ないくらいガッチガチだったんです、私。気がつけばあの日、ごはんすら1食も食べてなかった……

――エッ!?あの激しい、長丁場のステージの前に「ごはん抜き」ですか?しかも普段、どちらかと言わなくても食いしん坊な佐江ちゃんが?

(笑)いつもだったら「今日のごはんは、何?」とか「あ、差し入れだぁ!」みたいな感じなんですけど、あの日は選挙後も何ものどを通らなくて。ごはんを食べる余裕がなかったっていうより、ごはんを食べようっていう考えすら浮かばなかったんですよ。

――これまで国内外で数々の大舞台をこなしてきた佐江ちゃんが、どうしてそこまで?

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