巴御前役の秋元才加(左)と和田義盛役の横田栄司 (C)NHK

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。10月30日放送の第41回「義盛、お前に罪はない」では、歴史上有名な“和田合戦”が繰り広げられた末、長年、鎌倉幕府を支えてきた御家人の和田義盛が壮絶な最期を遂げた。これに関連して、義盛役の横田栄司と、義盛の愛妾・巴御前役の秋元才加がコメントを発表した。

 横田はまず、義盛の最期を演じたときの気持ちを次のように述懐した。

 「巴さんにも、畠山重忠にも、『おまえは生きろ』だとか、『もうちょっと生きていようぜ、楽しいこともあるぞ』なんて言っていた人が、結局ああいう死に方をしてしまうのが、時代なのか、運命なのか。『和田義盛は何を抜かったんだろう』なんてことを考えながら演じていました」

 続けて、「最期のシーンの、矢がいっぱい刺さったよろいというのは、作るのも大変なよろいでして、本当にスタッフの皆さんに感謝しながら横たわっていました」と撮影を振り返った。

 義盛を討ったのが、北条義時(小栗旬)と三浦義村(山本耕史)だったことについては、「和田義盛はどう思っていたか分からないですけれども、私としては、義時も義村も理由があって生きている、生き延びていくという時代ですから、生き延びていくための最善の手段を彼らも取っているはずで」と分析。

 「そういう意味では、ある部分、気の毒な面もありますし、それで失った心だとか、失った仲間や家族だとか、そういうことも彼らは抱えていると、和田義盛も横田栄司も知っているので、こういう時代だからこそ、これはこれで『しかたあるめぇ』と」と長年共に戦ってきた仲間に理解を示した。

 だが同時に、「義盛は『まぁ、おまえたちもな、よくやってるよ。じゃあ元気で生きていてくれよ。生きてりゃ楽しいこともあるぞ』という、ちょっと『悔しいけどな』とか、『ちくしょー』という気分もありながら、彼らのことを見つめていました」と本音もチラリとのぞかせた。

 そして、ここまで演じてきた義盛については、「本当に、立派な人物ではないのかもしれないですけれども、真っすぐな男で、うそをつかないし、最初のころからあまりキャラクターがブレていない、数少ない一人なんじゃないでしょうか」と振り返り、「(脚本の)三谷幸喜さんのおかげで、和田義盛という人物が、僕は日本の中で一番好きな日本人になったと自負しています」と胸を張った。

 最後に横田は、周囲への感謝を表す次の言葉で話を締めくくった。

 「本当に愛らしいキャラクターで、それをつくってくださったスタッフさん、共演者の皆さんに本当に感謝しています。そして応援してくださった皆さま、和田義盛をかわいがってくださった皆さまに心から感謝しています」

 一方、秋元は、馬で駆けていく巴について、「シーン的には、最終的にどうなったかというのは描かれていないんですけれど、もしかしたら義盛殿の亡きがらを探しに来たのかもしれないし、最後のせりふに、『妻』や『忠臣・和田義盛』という言葉が入っていたので、夫のプライドと妻のプライドを持って戦場に向かったのかなと思っています」と説明。

 さらに、巴がかつて愛した木曽義仲(青木崇高)の名を挙げ、「でも、以前の木曽義仲さまといたときの戦(いくさ)とはまた違った感覚で、夫婦の愛の証しじゃないですけど、操を立てるというか、そういう2人の関係を感じました」と語った。

 続いて、義仲と一緒だった木曽時代の巴にも話が及んだ。「木曽時代の巴は男と肩を並べて『男に絶対負けない』という感覚が結構、先立っていたんです。そうすればそうするほど、『やっぱり女なんだ』と。力も男性に比べたら足りない部分もあるし、声だって高いしとか、すごくジェンダーについて考えさせられることが多くて」

 そして、義仲が戦で亡くなった後、巴は義盛に引き取られるが、それ以後の変化について次のように振り返った。

 「だけど和田家に行ってからは、自分の女性性を受け止められた感覚です。すごく穏やかになったし、それと同時に戦に行っていたころの鋭い感じがなくなっているというのが不安でもあり、でも、今の幸せはすごく手放し難い、みたいな感覚でずっとお芝居をしていました」

 その上で、義盛との最後のシーンについては、「最後の義盛さんとのああいった対峙(たいじ)も、ご飯粒をつけながら『心配するな』と言う義盛さんを見て、『何てかわいらしい人と一緒になれたんだろう』と。2人の男性を愛した巴ですけど、すごく見る目があったんじゃないかなって」と語り、満足している様子をうかがわせた。

 最後に、巴が愛した義仲と義盛について、「2人とも、すごく真っすぐに、自分の中のプライドなど、そういうものをなるべく曲げずに、素直に正直に生きてきたかっこいい男性だったと思うし、また違った愛情ですけど、その2人に愛された巴もすてきな女性だったんじゃないかなと思っています」と語って話を締めくくった。

(構成・井上健一)