マルティン・ヘルムヒェン (C)Giorgia Bertazzi

 ヨーロッパで高い人気を誇るピアニスト、マルティン・ヘルムヒェンが来日する。12月19日、20日の2日間、東京都交響楽団の定期演奏会にソリストとして出演、エリアフ・インバルの指揮でベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を弾く。
 ヘルムヒェンは1982年ベルリン生まれ。ドイツのハノーファー音楽大学で学び、2001年のクララ・ハスキルコンクールの優勝後に演奏活動を開始している。ソロではシューマン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトなどの作品を中心にCDを数多く発表。室内楽にも熱心で、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタを全曲録音している。2019~20年にベルリン・ドイツ交響楽団とベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲をアルバムリリースし、グラモフォン・アワードを受賞した。聴いてみると、ピアノパートに出てくるシンプルな音階が、ヘルムヒェンが弾くと輝くように美しく正確で、豊かな音楽になっていることに気づく。余計な装飾がなく完成されたベートーヴェンの書いた音を、圧倒的なテクニックで引き締まった演奏として聴かせる。そんなヘルムヒェンのピアニズムは、大理石のギリシャ彫刻のような存在感があり、独創的な解釈が聴き手を魅了する。
 指揮のエリアフ・インバルは、イスラエル出身。1991年に東京都交響楽団と初共演して以来、マーラーやショスタコーヴィチなど数多くのライブCDを録音してきた巨匠だ。特別客演指揮者、プリンシパル・コンダクターを経て、現在は都響の桂冠指揮者をつとめている。きわめて高度な演奏力を誇る都響は、難易度の高い要求をインバルが出してもきっちりと音にしてくれることは間違いない。そこに40歳と、演奏家として脂がのっているヘルムヒェンが、ベートーヴェンで正面から組み合う。ピアノとオケの音が端正に、まばゆく、火花を散らしながら疾走する様子が思い浮かぶ。相当に聴きごたえのあるコンサートとなりそうだ。
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(文・音楽ライター 山本美芽)