公的年金制度の今後の見通しは?

今後、さらに少子高齢化が進むと現役世代の人数が減っていくわけですから、それにともなって、年金財政の収入の柱である現役世代が納める年金保険料が少なくなっていくのは予想できますよね。

収入が減るということは、支出も減らさないとバランスを取ることができません。

つまり、今後私たちが将来受け取る年金額は減額となる可能性が非常に高いということです。

(もちろん、政府もこのような状況を打破しようと年金保険料を引き上げるべく賃金の引き上げを企業に働きかけたり、厚生年金に加入できる対象者を広げようとしたりすることで何とか収入を増やそうとはしています)

私たちの生活が破綻するかもしれない…!?

これから先の年金額が減額される可能性が非常に高いとはいえ、減額されることが確定しているわけではありません。

そこでまずは、今の年金財政の収支状況が今後も変わらないことを前提に、私たちの生活が破綻するのかどうか考えてみます。

例えば自営業者の場合、60歳以降も収入が維持できるのであれば、国民年金保険料負担がなくなり、65歳以降は国民年金を受け取ることが出来るので、生活水準は維持できるかもしれません。

しかし年齢を重ね、いずれ働けなくなって引退を迎えた時は、国民年金の他にある程度の生活資金を確保しておかなければ、大幅に生活水準を下げるどころか最低限の生活をしていくことも難しいかもしれません。

一方、会社員の場合は定年退職後、働かなければその瞬間から収入が無くなります。例えば60歳で退職し、厚生年金の受給権が発生する65歳までの5年間は働かなければ全く収入がないということですよね。

仮に退職金が2,000万円 あって、これをもって5年間の生活費を賄うとすれば年間400万円で生活することになり、一定の生活水準は維持できるかもしれません。

しかし、65歳以降の生活費を年金だけで賄うことができるでしょうか?

400万円も年金を受け取れる人はまずいません。というのも厚生年金と国民年金を合算した年金の最高額は理論上、約450万円なのですが、この金額を受け取るためには毎年の年収が約1,200万円を越える必要があるからです。

ここでは極端な例を挙げましたが、ご理解いただきたいのは、現役時代の年収がいくらであれ、私たちが受け取れる年金額は現役時代の収入に対して大幅に少なくなる可能性が高いということです。

正確には「ねんきんネット」でシミュレーションすることができますが、現役時代の収入に対して年金額はざっくり4割弱程度(例:37.5%=450万円/1,200万円)の金額しか受け取れないと考えてください。

このように定年退職後の年金収入が現役時代の収入を大幅に下回るということは、その収入に合わせて生活水準を引き下げなければ、いずれ生活が破綻してしまいます。

収入が下がってから節約すればいいや!と安易に考えがちですが、生活水準を引き下げるのは簡単なことではありません。

収入が半分になったからといって生活費を半分にすることはできないからです。

・食費を削りますか?⇒栄養が偏り体調を崩し、病気になって医療費がかかるかもしれません。
・光熱費を削れますか?⇒基本料金があるので、光熱費を半分にすることはできません。
・引っ越しますか?⇒住空間は生活の基盤です。慣れ親しんだ環境を手放せますか?

いずれにしても生活水準を引き下げるということは、当たり前と思っている今の生活習慣を大きく見直さざるをえません。

習慣とは長い年月をかけて無意識に身に着いてきたものですよね。このように身近なことに注目してみると、習慣を変えることがいかに難しいかが分かるのではないでしょうか。

一方で、リタイアする頃には子供も成人し、教育費がかからなくなっていたり、住宅ローンを完済していたりと、現役時代と比べて支出も減っているかもしれません。

しかし、年を重ねていくと自分や親の医療費や介護費がかかることもありえますし、持家の場合は大規模修繕が必要になることもありえます。また意外と見落としがちな、孫へのお小遣いや教育費の支援も馬鹿にはなりません。

このようにリタイア後も生活水準は下がりにくく、さらにリタイア後ならではの支出も発生することを想定しておく必要があるでしょう。