「遅咲きタイプの子」が中学受験で抱えるリスクとは?

——それでは、「早咲きタイプの子」に対して、「遅咲きタイプの子」とはどんな子のことをいうのでしょうか?

石田「『早咲き』という表現と対にしているので『遅咲き』と表現していますが、むしろこのタイプの子はいわゆる“基本型”です。

中学受験というものがどんどん浸透してきていることで、そもそも多くの親が勘違いしているのですが、中学受験というものは“通常の路線”ではありません。

誤解を恐れずにいえば、学習内容を小学生の段階で急加速させて取り込ませる中学受験はむしろ“異常な道”といえます。それだけ大変なことを子どもにやらせている、ということなのです。

小学校、中学校と学校の授業に合わせて思考力や知識量をつけていく成長の仕方、つまり遅咲きタイプの子のほうがむしろ“普通”なのです。

私はこの遅咲きタイプの子を『大器晩成型』『高校受験型』と表現することもありますね」

——遅咲きタイプの子を中学受験に向かわせることで、考えうるリスクはありますか?

石田「やり方によっては勉強嫌いを助長させてしまうリスクがあります。このリスクを背負ってしまった場合、たとえ志望校に合格してもその後まったく勉強をしなくなるなどの状況を作り出してしまう可能性もありますね」

——それは、子ども自身がたった今持っているキャパシティ以上の学習をさせてしまうせいでしょうか?

石田「そうですね。ただ何よりもったいないのは、『志望校によっては実はその子どもが持っているキャパシティでも十分対応できたのに、それ以上のことをやらせてしまって勉強嫌いになってしまう』というパターンです。

試験問題は学校によってさまざまで、トリッキーで難易度の高い問題を出す学校もあれば、基本的な問題を中心に出題する学校もあります。

後者であれば、わざわざ必要以上に難しい問題を解かせる必要はないのですが、まだ志望校を絞る前の段階では難易度の高い問題も一通りこなすことになりますよね。

この段階では、塾も、もちろん親も、その子にとって必要な学習と必要でない学習の精査ができません。

そのせいで問題が解けないことがトラウマ化し、勉強に対しての苦手意識が根づいてしまうのです」

——勉強嫌いを招くリスクを回避するために、親ができることはどんなことですか?

石田「まずは先に話したように、子どものタイプが早咲きか遅咲きかを見極めることです。

その上で遅咲きタイプの子であれば、もしも学習が思うように進まなかったり志望校に合格できなかったりしても、親がイライラやモヤモヤを感じないようにすることが大切ですね。

遅咲きタイプの子は『勉強ができない』のではなく『大器晩成型』なのです。花が咲くには少し早い時期に中学受験というものに取り組ませている、という意識をしっかりと親が持っておきましょう」