しかし、往々にして映像が飛び出すことへの感動はこのカウントダウンがピークです。なぜなら、映像はその後はずっと飛び出しっぱなしで、あとは飛び出すことが当たり前になってしまうからです。ここに最新技術の悲哀が詰まっていますね。

さらに、ストーリー自体がつまらなかった場合は、最初の感動はどこへやら。脚本家への怒りと時間を無駄にした虚しさだけが残り、あなたは立ち上がる気力もなくなってしまいます。

 

 

 

 

 


やっとのことでスクリーンを後にすると、やる気のなさそうな天然パーマの店員が言ってきます。

「あなた3Dメガネ借りてますよね? 返してくださいよ、その3Dメガネ。それ、あなたにあげたわけじゃないですからね。まったく、客ってやつは図々しいなあ…」

 

 

 

 

 


怒り狂ったあなたは3Dメガネをコテンパンに踏みつけ、憤然としながら劇場を後にするのです。

「ああ、この映画を見てほんとうに大切なことがひとつわかったよ。つまらない映像は飛び出してもつまらないってことがね!」

 

 

 

 

 


「ごめんよメガネちゃん…」あなたはおもむろにバッグから、開演前に踏みまくってしまった愛用の黒縁メガネを取り出し、ホコリを払ってからかけ直します。

「もう踏みつけたりしないから…」

 

 

 

 

 

 


そして劇場を出たあなたは、入る前とまったく違う外の様子に気付くのです。
「なんてこった、3Dメガネなんてかけなくなってこの世界は飛び出しまくりじゃないか!」と。

生活している時には気付きもしなかったこの素晴らしい世界の色彩、音、臨場感。それら全てが一気に押し寄せ、あなたは自分の人生の素晴らしさを悟り、叫ぶのです。

 

「ありがとう、クソクソつまらない映画!」

 

 

 

 

いかがでしたか? 初めて3D映画を見に行く際には、このような問題が起こることを見越し、事前に周到に準備することをお勧めします。

願わくば、あなたの初めての3D映画が最高につまらないことを…。

大学を中退して成り行きで専門学校を卒業し、ろくに就職もせずにオモコロというサイトで出鱈目な記事を書き続けて数年、分かったのは人はインターネット上で存在感が増すほど社会的にゴミに近付いていくということでした。

バックナンバー