2012年の一発目、おせち・お雑煮にそろそろ飽きてきた方々へ向けて料理漫画をお届けしたい。ただ流行のグルメ漫画を並べるのも芸がないので、カレンダーをさかのぼって1970年代・80年代・90年代という各時代から特色ある3タイトルの濃い“料理勝負”漫画を探してきた。興味ある方はお付き合い願いたい。

【70年代】料理勝負の草分け!『包丁人味平』(原作:牛次郎 作画:ビッグ錠)

一流の板前を父にもつ少年・味平の夢は、やはり一流の料理人。だが親の予想に反して彼が選んだ世界は高級日本料理でなく「美味くて安い洋食のコック」だった。家を飛び出して修行に明け暮れる味平は持ち前のガッツと負けん気でめきめき成長。ライバルたちと数多くの“味勝負”を繰り広げることとなる。週刊少年ジャンプでの連載スタートは1973年。現代まで形を変えながら続く「料理勝負」漫画の基本フォーマットを作ったと言われる記念碑的な作品だ。まだ『美味しんぼ』すら始まっていないこの時代、一般読者の料理に対する知識がそれほど多くなかったからだろうか、フライパンの振り方からタマネギの皮むきまで味平の修行シーンが丁寧に描かれているのが印象的。味付けの工夫で格上の料理人を倒すというより、ひたすら腕を鍛えまくるノリ(特に序盤)はスポ根漫画のそれに近い。

キモとなる料理勝負のシーンは現代の漫画と比べてまったく遜色ない。単純に美味しい料理を作るだけでなく、キャベツの千切りスピード勝負、刃物を駆使した氷細工勝負、アイスクリームの揚げ物勝負など実にバラエティ豊か。勝負名や技名も「包丁試し」「五条流 水面浮島ぎり」などハッタリが効いていて男子の心を絶妙にくすぐってくれる。

ちなみに時代を感じさせるネタとしては放送禁止ギリギリの単語が出てきたり、吸い物勝負で「ある物」の混入が勝敗を分けたり(今だと確実に保健所が飛んでくる)、これまた話題豊富。あらためて読み返してみても、夢中になって読破してしまうパワーを秘めた怪作である。

【80年代】ルネッサンス情熱!『ミスター味っ子』(作:寺沢大介)

亡き父の後を継いで、母とともに大衆食堂を切り盛りする天才料理少年・陽一。その腕前とチャレンジ精神が料理界の大物・村田源二郎(味皇)の目にとまり、以後、さまざまな料理勝負に挑んでいく。

週刊少年マガジンでの連載スタートは1986年。連載時期がバブル景気と重なることもあってか、ド派手さ&エンターテイメント性が前面に出ている印象だ。地味な修行シーンもそれなりにあるが『味平』ほどの話数を費やすことなく、料理勝負一回ごとの連載スパンも短め。洋食から和食、デザート類に至るまで次々とライバルが現われ、常識にとらわれない陽一のアイデアが勝負を決める……というパターンが多い。

アニメ版では料理を食べた人間のリアクションが極端に誇張され、巨大化したり目からビームが出たり、いまだファンの間では伝説になっている。後の『中華一番!』や『焼きたて!! ジャぱん』のようなリアクション重視の料理漫画は、これ無くして誕生しなかっただろう。

作者の寺沢氏はこの後も『将太の寿司』『喰いタン』など料理を題材にした話題作を発表。2005年からはまさかの続編、陽一の息子を主役にした『ミスター味っ子2』も好評連載中だ。