生徒と学校のメリットは

ここで小中一貫校のメリットを伺った。

両先生によれば、最大で8年上の年長者と一緒に活動する機会があるためか、「被災地支援をやってみたい」など、大人顔負けの相談をしにくる小学生も増えてきているのだとか。こうした、小学生のうちから専門性の高い内容に関心を持てるようになったことも、「小中一貫教育」のメリットといえるだろう。

場合によっては、幼稚園や高校との連携も(同校資料より)
9年間を見据えたカリキュラム、英語科の一例
 

そのほか、避難訓練などでも、上級生がよりリーターシップを発揮するようになってきたのだとか。海老名副校長は、同校の児童生徒について「非常に学習に前向きな子が多いです」と話す。

やはり、9年間の「学びの連続性」を意識して、カリキュラム作りを進めている成果だろうか。

閑静な住宅街の中に建つ同校、戸建住宅に囲まれている

「小中一貫教育」は、学校側にも利点がある。

西金沢中学校では10年ほど前、1学年の生徒数が10人を割ってしまったことがあったそうだ。住宅地の世代構成の変化により児童生徒数が激減したことに加え、部活動の選択肢が狭まることなどを考慮して、近隣の公立中学校や私学への進学指向も高まったことなどが影響したようだ。

ところが「小中一貫教育」実施後は、小中学校のなめらかな接続によって児童の学習意欲や公立中学校への信頼感が高まっており、進学する児童の割合が上昇している。

また、9年間という長期間を生かした独自性を打ち出すことも可能だ。海外からの帰国子女なども珍しくないという同校では、特に英語活動を充実させている。

オーストラリアにある「メイフィールド校」との交流の様子
左から、言わザル・見ザル・聞かザルならぬ「三コアラ」
 

オーストラリアとの交流が始まった立役者は、実は、金沢動物園のコアラらしい。コアラがきっかけとなって、オーストラリアへの関心が高まり、地域の皆さんのご尽力から児童のホームステイなど、相互交流が可能となったようだ。現在は、文部科学省から教育課程特例校の指定を受け、外国語活動のカリキュラムも独自の工夫を重ねている。

そんな同校が掲げる小中一貫教育の目標は、「世界を見つめ、共に生きる中で、自らの生き方を創り出す力を育てます」となっている。