死後事務委任の活用を

とはいえ、住んでいたお部屋の中に何も残さず亡くなるのは至難の業です。

生きているうちにはさまざまな物が必要ですし、ちょうど亡くなる直前に身の回りの品を全て処分してきれいさっぱりと身一つで旅立つ……とはいかないのは当然ですから、残された物の処分についてもしっかり備えておきたいところです。

そこで利用したいのが、「死後事務委任契約」です。これは自分が死んだ後のことを、元気なうちに依頼しておくことです。ここでは賃貸借契約の解約と、残置物の処分の依頼をしておきましょう。

この死後事務委任をしておけば、亡くなった後に賃貸借契約の解約等の件で親族に連絡が行くことはありません。

近くに友人や知人、親戚がいないといった場合には、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することができます。

人は必ず死にます。


そして、死んだら自分自身で身の回りの整理はできません。必ず誰かの手を借りることになります。

だからこそ、死後に期せずして遠くの親戚に迷惑をかけてしまうといったことがないように、まずはご自身が元気なうちに周りを巻き込み、皆で備えておきましょうね。

とは言え、声をかけられる人が身近にいない、という方も多いでしょう。

そうした場合こそ、第三者である司法書士や弁護士の出番です。ためらわずに相談に来ていただき、サポートやアドバイスを求めてください。

それぞれがこうした備えをしておくことで、高齢になっても部屋が普通に借りられる社会になっていくはずです。

(記事は2024年4月1日現在の情報に基づいています。質問は司法書士の実際の体験に基づいた創作です)

司法書士:太田垣章子

神戸海星女子学院卒業後、プロ野球の球団広報を経て認定司法書士に。約3000件の賃貸トラブル解決に家主側の立場から携わってきた。住まいにまつわる問題のほか、終活・相続のサポートにも従事。

講演や執筆等でも積極的に発信している。著書に『2000人の大家さんを救った司法書士が教える賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)、『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』『不動産大異変』『あなたが独りで倒れて困ること30』(いずれもポプラ社)。東京司法書士会所属、会員番号第6040号。

【記事協力:相続会議
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