結婚するまで他人だった男女が一つ屋根の下で暮らすと、時には波風が立つこともあります。例えば、隠し事や嘘、逆ギレなど。どんなに些細なことでも相手の気持ちが分からないせいで、夫婦喧嘩が発生することがあります。

夫婦は時折、結婚生活を続けるか否か、離婚の可否の判断を迫られることがあります。これは、サッカーの試合で審判がカードを出す場面と似ているのではないでしょうか。

レッドカードは即退場を、イエローカードは警告を意味します。同じ選手が2枚目のイエローカードをもらうと退場となります。

夫婦の場合、退場は離婚を意味します。レッドカードは不倫や借金、暴力など即離婚に値する酷いトラブルです。一方、イエローカードは即離婚するほどではないトラブルですが、繰り返されると最終的には離婚に至ることがあります。

筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談に乗っています。今回は夫の不誠実、非常識、無神経に悩まされ、イエローカードが積み重なっていた長谷川瑞穂さん(仮名・46歳)のケースを紹介します。

最終的に発生したのはレッドカード級のトラブル。瑞穂さんはついに決断を迫られたのです。一体何があったのでしょうか。

結婚生活20年の夫婦に突然やってきた「夫の逮捕」

「主人が逮捕されたんです!」

瑞穂さんには20年間連れ添った夫がいますが、逮捕の現場は居酒屋のトイレでした。

夫は泥酔状態でトイレに入り、そのまま寝入ってしまいました。トイレが空かないと他の客がクレームを入れ、店員が脚立を使ってドアの上から個室に入ったのです。店員は飛び降りる形でトイレに入り、夫の顔を蹴ってしまいました。

夫は激怒し店員の胸ぐらを掴み、頭を何度も壁に叩きつけました。店長が駆けつけ、ドアを蹴破り店員を救出しましたが意識がない状態でした。夫はトイレの便座などを破壊しながら激しく抵抗しましたが、何とか取り押さえられ、警察に通報されました。

数時間後、瑞穂さんは警察署に呼び出され夫と面会しましたが、夫に反省の色はなし。「やってないのに『やった』なんて言えない」と悪びれずに言うので、瑞穂さんは呆れ返って帰りました。

積もりに積もったイエローカード級のトラブル

夫は最初からろくでなしというわけではありませんでしたが、イエローカード級のトラブルを何度も起こしてきました。

1. 新車の購入
夫は瑞穂さんに無断で新車を購入。瑞穂さんが妊娠中にも関わらず育児に不向きなスポーツカーを購入し、頭金なしのフルローンを組んだのです。

2. 飲み会の支払い
夫は会社の飲み会で参加者全員分の料金を自分1人で支払いました。後日、クレジットカードの請求(13万円)が届きましたが、問い詰めても夫は「お前に仕事の何が分かる!」と開き直りました。

3. ハワイ旅行
年末年始の帰省をすっぽかしてハワイへゴルフに行った夫。瑞穂さんは実家で親戚中に「顔を出さないなんてどういうことだ!」と叱られ、ひたすら謝るしかありませんでした。

離婚の決断

夫はイエローカード級のトラブルを繰り返してきましたが、瑞穂さんは離婚するつもりはありませんでした。しかし今回の逮捕事件はレッドカード級。瑞穂さんは離婚を決断しました。

逮捕されたことで妻子がどのような立場に置かれているかを理解し、ようやく「とんでもないことをしてしまった」と自覚したのでしょうか。夫はすんなり離婚届に住所、名前を記入し、瑞穂さんはその足で役所へ提出して離婚が成立しました。

サッカーの場合、カードを判定するのは中立の審判です。しかし夫婦の場合、判定するのは配偶者。離婚の当事者であり関係者であるため、偏った判定になるのは仕方がありません。冷静に離婚を検討することが重要です。

隣の芝生は青いといいますが、離婚した方がいい人生が待っているとは限りません。後悔しないためにも冷静に判断しましょう。

1980年生。国学院大学卒。行政書士・FP。離婚に特化し開業。6年目で相談7千件、会員は6千人を突破。バナナマン設楽さんの「ノンストップ」、明石家さんまさんの「ホンマでっかTV」、EXITさん初MC「市民のミカタ」などに出演。「STORY」「AR」などファッション誌にも登場。著書は「婚活貧乏」など11冊。