私にはハワイアンズしかなかった
それでは、喜びを感じるのはどんなとき?
熊谷:踊るときに声を出すんですけど、そのときにお客さまも一緒に声を出してくれると嬉しい。最近、それを特に実感しています。
小宮:ステージを観る機会があったら、彼女に注目してください。いちばんニコニコ笑って踊っていますから(笑)。
熊谷:最初のころは自分でもできるかな? 大丈夫かな?って泣きそうになったこともあったけど、いまは辛いことがあまりないですからね(笑)。
小宮:でも、お客さまが笑顔で観てくれているのがやっぱりいちばん嬉しいです。正直、仲間に“行くぞ!”って無理矢理連れて来られた人たちもいると思うんです。そんな人たちが笑顔で踊っている私たちを見て笑顔になってくださったり、アンケート用紙に“元気をもらいました”とか“こんなにすごいショーだとは思わなかった”“思った以上にスゴかった”って書いてあると、“よしっ! 明日もやるぞ!”って思いますね。
渡辺:いわきの方がアンケートに“フラガールはいわきの誇りだ”って書いてくださったり、ショーの後の記念撮影のときに「感動して泣いてしまいました」って言いながら写真を撮りに来てくださる人がいると、すごくやり甲斐を感じます。
賀澤:私も近くで観ていたレッスン中の後輩やお客さんから「観ていて泣いちゃいました」って言われたときは嬉しかった。意味は分からなくても、自分の心から出た何かが伝わったんだなと思ったし、子供たちから「私もフラガールになりたい」と言われたときは、彼女たちに感動を与え、夢を持つきっかけになっているんだなということを痛感して、もっと子供たちがなりたいなと思うお姉さんにならなきゃいけないなと思いました。
そんな彼女たちの脳裏には、いまでも2011年3月11日に福島を襲った東日本大震災の忌まわしい記憶が鮮明に焼きついている。
小宮:震災が起きた翌日は“ハワイアンズが潰れちゃうんじゃないか?”と思いましたけど、そのときはニュースでも流れたようにハワイアンズに被災した方々を受け入れたりしていたので、落ち込んでいる暇なんてなくて。でも、その1ヶ月後ぐらいに直下型が来たときは、正直“終わった”と思いました。だけど……その年に熊谷が入ってきてくれたんです。しかも震災の2ヶ月後ぐらいに秋田から来てくれたので、本当に嬉しかった。そんなときに新しいメンバーが入ってくるなんて普通は思わないですからね。
熊谷:よく言われます(笑)。でも、私にはハワイアンズしかなかったので。
小宮:熊谷のおかげで余計に“頑張らなきゃ”って思いました。先生から「どんなに辛くても、笑顔は絶やしちゃダメよ」って言われていましたけど、熊谷が入ってきたときに“よし、再建させよう!”という気持ちになれて。全国キャラバンで日本中を飛び回ったことも、メンバーの結束力を深めたと思います。
賀澤:稼働できる28人が東北チーム、九州チーム、関西チームの3つに分かれて全国に飛んだんですけど、チーム同士が久しぶりに地方で会うこともあって。
小宮:全国キャラバンのときにその街で観てくださって、その後にハワイアンズまで会いにきてくれたお客さまもいます。再建して全館オープンしてからは、全国キャラバンで私たちのことを初めて知り、本当のショーが観たかったからと言ってきてくださる方がいまも多くて。関東のお客さまだけではなく、長崎とか九州からもたくさん観に来てくれてますよ。
現在36人からなるフラガールは、みんなをまとめる花形のリーダーとリーダーをサポートするふたりのサブリーダー、数人のソロダンサーを中心に構成されているが、ほかのダンサーたちの夢もリーダーやソロダンサーになること?
賀澤:人それぞれですね。そこがすべてじゃない。そこを目指す人もいれば、何年か踊った後に普通の仕事に就く人もいます。