しかし、実際に少しアドラー心理学に興味を持ったけど、どう活用したらいいのかわからない。そんな人が増えてきたからこそ、今もう一冊のアドラー心理学の本が注目を集めているのかもしれません。「アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉」(小倉広著 ダイヤモンド社)です。

この本は、アドラーの100の言葉を取り上げ、その言葉一つひとつに現代で起こりうる身近な例や言葉を使って解説されているので、読みやすいのが特徴です。

著者は、アドラー心理学に出会うまで自信がなく迷う事が多かったそうですが、その経験があったからこそ、読者がもっとアドラー心理学を身近に感じられるようにまとめられている一冊だと思います。そして、この本の中では「勇気づけ」という言葉の印象が強く感じられます。この本の中にあるアドラーの言葉は、どこか見離されたようだと錯覚してしまうくらいの「衝撃」を受けるのではなく、厳しい言葉の中に「もっとシンプルで大丈夫」と背中を押されているような、まさしく「勇気づけ」を感じるのです。

「嫌われる勇気」がアドラー心理学の「入門書」と言われているのであれば、「アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉」は「実用書」だと言えると思います。数多く書店に並ぶ自己啓発書をたくさん読んではみたものの、それをどう実践したらいいのかわからずに、知識だけ得て行動できずに結果が出ないというのはよく聞く話ですが、実際に広まりつつあるアドラー心理学をどのように実践したらいいのかわからないと感じている人も多いのかもしれません。そして、アドラー心理学を知りたいと思っている人に加えて、そのように「実践編」を求める人がこの「アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉」を手にしているのかもしれません。

私は、アドラー心理学はもちろん、心理学そのものに詳しいわけではありません。何かを悩んでいて心理学を求めていたわけでもないので、この二冊を読んだ私の解釈が正しいのかはわかりません。ただ、この二冊の本は、少なくとも私と心理学の距離を縮めてくれた事だけはわかります。そして、日本の書店でこの本が注目されているというのは、きっと同じようにこの本を見て何かを感じ、心の中で小さな革命が起こっている人が多くいるのだと思います。

アドラー心理学は、悩んでいる人のための心理学ではなく、もう一歩を踏み出すための「勇気」が欲しい人のための心理学だと思います。