『孤独のグルメ』ゴローちゃんばりに焼肉をバクバク
ご存知のない方のために簡単に説明しておくと『孤独のグルメ』とは、「月刊PANJA」(扶桑社)で1994(平成6)年~1996(平成8)年にかけて連載されていた原作・久住昌之、作画・谷口ジローによるマンガ。
主人公のゴローちゃんこと、フリーの輸入雑貨商の井之頭五郎が、行く先々で、誰にも邪魔されず、気を使わず料理を食べるという物語で、ゴローちゃんのハードボイルドな言動や台詞まわしが魅力のひとつになっている。
連載当時はさほど話題にならなかったが、2000(平成12)年に文庫化されてから、ジワジワと人気に火が付き、2009年にはドラマCDが発売、そして今年1月からテレビ東京系で実写化された。マンガやテレビの舞台になった店に行くことを“聖地巡礼”と呼ぶ熱狂的なファンも多い。
さて、テレビ版では同じ川崎市内の八丁畷の焼肉店が舞台だったが、原作で登場するのはセメント通りにある「東天閣」。そこではまれぽ編集部の山下氏とともに突撃。
同店はセメント通りの出口、産業通り側にあり、創業40年を誇る老舗。門構えも立派でセメント通りにある焼肉店の中でも高級店のひとつだ。
マンガやテレビの放映以降、その影響はあったのだろうか。店長の原英敏さんに尋ねてみると、「全体としてすごく増えているわけではありませんが、『マンガで読みました』と声をかけてくださるお客様がいるのはありがたいですね」と笑みを浮かべる。
7~8年前に内装を全面改装。マンガ掲載当時よりおしゃれな感じだ。
高級店ということもあり、そう気軽に足を運べないのかもしれないが、ファンが足を運んでいるのは確かなようだ。
そうこうしているうち注文した品物が続々と登場。カルビも脂身と赤味とバランスがよく、ミノにも細かく切れ目が入っており、丁寧な仕事ぶりだ。
ゴローちゃんが作中で「こいつはなかなかいい肉だ」というのもムリはない。
店長の原さんは、同店に勤める前までは第一セメント(現ディ・シー)に勤務されていて、お店にもよく足を運んでいたという。奇遇といえば奇遇だ。そんな原さんでも、セメント通りと呼ばれるようになった時期まではご存知ないそうだ。
取材を終えて
ゴム通りもセメント通りも、地元での呼び名がいつしか定着したものだった。国道○号線や県道○号線といった無機質な呼び名でなく、こうした愛称が付けられているほうがなんとなくホッとするのは記者ばかりではないだろう。
セメント通りは原店長が勤務し始めた20年程前は、今の新大久保に負けないほど賑やかだったという。2001(平成13)年のBSE騒動により、焼肉店の数も減り、当時に比較すると寂しくなってしまったそうだが、日本を代表するコリアンタウンとして今後も頑張ってほしいものだ。
◆東天閣 川崎本店
川崎市川崎区浜町4-12-5
044-355-1234
11:00~24:00(LO23:30)
第2月曜定休(祝日の場合は翌日)
※本記事は2012年6月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。